第166話 襄陽城攻め前夜1
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容を尋ねた。
「襄陽城攻めの先陣を任せたい」
孫堅は正宗の頼みを聞くと沈黙した。豪族達は正宗と彼女を見比べ様子を窺う。下手なことを言って先陣の役目を命じられては堪らないと正宗と視線を合わせないようしていた。正宗は豪族達を一瞥し彼らの様子を見て興味を失ったように孫堅に視線を戻した。
「孫文台、どうだ頼みを聞いてもらえるか?」
再度、正宗は孫堅に頼んだ。孫堅は悩ましい表情を浮かべ沈黙していた。正宗軍による蔡一族への粛清の結果、南郡に居を置く蔡一族は正宗軍を恐れ襄陽城に逃げ込んでいた。他郡に居を置く蔡一族も正宗軍の虐殺の話のみが一人歩きし、正宗への恭順後の処遇に恐怖し襄陽城に逃げ込んでいる有様であった。この状況下で正宗が襄陽城攻めを開始すれば、襄陽城側の抵抗は激しいことが予想でき、先陣を勤める部隊の損耗はいかほどのものとなるか想像できない。それが分かるだけに正宗へ媚を売る機会と理解しつつも豪族達は先陣の役目を避けていた。
豪族達は孫堅に先陣を任されることに何ら不満を抱いていない様子だ。これが同郷の他の豪族が先陣を任されれば反応はまた違ったかもしれない。元々、彼女と豪族達は友好的な関係とはいいがたい。彼らは彼女個人と彼女が育て上げた軍閥を背景とした軍事力に服しているだけで、腹の中では彼女のことを見下していた。当然彼女に助け船や支援をしようという者達はいなかった。
「孫文台は武勇に優ると聞いていたがただの噂であったか」
正宗は興味を失ったように孫堅から視線を逸らした。
「星、三日後に襄陽城を攻める。主将は星。副将は?菜とする。準備を進めよ」
「畏まりました」
星と?菜は揃って拱手し正宗に即答した。正宗は二人の返事を確認すると視線を孫堅に向けた。彼の瞳は失望の色が映っていた。
「孫文台、先ほどの話は忘れてくれ。襄陽城を余の配下の軍で攻め落とす」
正宗は淡々と言った。この様子に豪族達は安堵の表情を浮かべていた。だが孫堅だけは違った。正宗の言葉を孫堅への侮りと感じたのか苦渋の表情だった。
「車騎将軍、お待ちください。孫文台、喜んで襄陽城攻めの先陣を勤めさせていただきます」
孫堅は正宗に拱手して力強く言った。勝気な性格の彼女にとって他者に臆病者と思われることが我慢ならなかったのかもしれない。今の彼女には躊躇する気持ちなど霧散していた。正宗は孫堅の返事を聞くと心強そうに彼女を見た。
「孫文台、そなたの武勇をとくと見せて貰うぞ」
正宗は打って変わって満足そうな笑みを浮かべ孫堅に言った。孫策は正宗の笑みを見て憮然とした表情を一瞬見せるも直ぐに平静を装った。
「車騎将軍、ご期待に添うべく粉骨砕身頑張らせていただきます。孫文台必ずや一番槍を勤めさせていただきます」
孫堅
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