第166話 襄陽城攻め前夜1
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けに戦場での今の姿が彼女の本当の姿なのかもしれない。正宗も孫堅の評価を変えたのか表情に笑みを浮かべていた。孫堅も正宗の友好的な態度に安堵しているようだった。
「孫文台、参陣の挨拶わざわざご苦労。太守とはいえ一万以上の兵を出すとは長沙郡の守りは大丈夫なのだろうな?」
「信用できる部下に任せておりますので問題ございません」
正宗は視線を後ろに向け、孫策と孫権を順に見た。
「甘興覇はいないのか?」
「甘興覇は陣所には参上する身分ではないと考え外で控えさせております。甘興覇にご用でございますでしょうか?」
孫堅は正宗に言った。
「この私の檄文を届けるために昼夜を問わず走ったと以前聞いたのでな。褒美を取らそうと思う。この場に呼んで来て欲しい」
正宗が孫堅に返答すると、周囲がざわめいた。豪族達は嫉妬の視線を孫堅に向けていた。孫堅自身に褒美を与えた訳ではないが、甘寧は孫堅配下である。家臣の功績は主人の功績といえるため豪族達は孫堅に出し抜かれたと思っているようだ。孫堅と彼女の娘達は表情を固くしていた。孫堅は思いつきで正宗に嘘をついた。だが、この場で真実を喋る雰囲気ではなかった。正宗は孫堅達三人を訝しむが周囲の豪族達に視線を移すと得心した様子になった。
「甘興覇の件は後で良いだろう。軍議を先に進めるとする。孫文台、甘興覇を後で私の元に呼べ」
「車騎将軍、畏まりました」
孫堅は一瞬沈黙するも正宗に対して拱手し頷いた。
「余は出自を問わん。余が問うは功の大小のみ。褒美を望むなら勲功を上げよ」
正宗は孫堅の返事を確認すると、豪族達に冷徹な視線を送り黙らせた。正宗の迫力に気圧され豪族達は沈黙し、その場に静寂が包まれるが豪族達の嫉妬の視線は孫堅達三人が席に着いても向けられていた。孫堅と孫策は豪族達の視線を気にしていなかったが、孫権は居心地が悪そうだった。
「孫長沙郡太守、此度の参陣ご苦労様です」
静寂を破ったのは朱里だった。孫堅は朱里に対して黙礼した。
「孫長沙郡太守、正宗様が貴殿の武勇を見込み頼みたき儀がございます」
朱里は朗々と豪族達にも聞こえる声で孫堅に言った。孫堅は彼女の言葉に表情を固めた。孫堅の斜め後ろ左に座していた孫策は不満気な表情を浮かべた。襄陽城攻めを目前にして正宗が孫堅に頼みたいことなど限られる。彼女は正宗に貸しがあるからだ。豪族達はひそひそと話はじめるが表情は喜色をはらんでいた。豪族達も正宗と孫堅の因縁を噂で聞き及んでいるのかもしれない。
「孫文台、そなたの武勇を見込んで頼みたいことがある」
正宗は自ら口を開き孫堅に声をかけた。孫堅は正宗に顔を向けた。
「如何様な頼みにございますか?」
孫堅もここで否とは言えないと自覚したのか口を開き内
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