第166話 襄陽城攻め前夜1
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瑁軍の敗退は事実と荊州の民は受け取るでしょう。それは豪族達も同じです。正宗様が襄陽城を面前に対陣される頃には蜜に集る蟻の如く豪族達が兵を連れて集まっておりましょう。豪族達の兵など物の役に立たないでしょうが、周囲の警備程度なら使えますでしょう。恩賞は彼らの現状の権益を安堵すればよいかと存じます」
伊斗香は続けて正宗に献策した。
「我らは襄陽城に向かう。伊斗香はお前の旗下である七千五百を率い宜城を接収し計画を遂行せよ」
正宗は頷き幕僚に命令を出すと伊斗香に指示を出した。その後、正宗軍は軍を編成し直し襄陽城に向けて転進をはじめた。
正宗に命を救われた魏延は正宗軍には同行していた。彼女は多くの血を失い身動きを取れない状況であったため、兵糧を運ぶ荷台を改造し彼女を傷病兵としてそれに乗せ運ばれた。
その後、正宗軍は襄陽城の正面から二十里(八キロメートル)の場所に着陣した。正宗軍の元には近隣の豪族達が小勢を供出に正宗に参陣の願いを申し出てきた。
一ヶ月が経過した頃、星を主将とする正宗軍五万が荊州入りした。その軍は荊州入り同時に南郡を南下し襄陽城に着陣し正宗と合流した。街道を移動する正宗軍五万の威容は荊州の民の目に止まり、民の口々から豪族達の耳にも入った。既に蔡瑁の夜襲を正宗軍が盛大に蹴散らしたことは荊州中に広まっていたこともあり、正宗軍五万の到着の報は蔡瑁軍の敗色は濃厚であると思うに十分だった。既に正宗軍に参陣する軍がちらほらと出てきていたが、この頃から豪族達は小勢ながら正宗軍に馳せ参じるようになった。彼らは戦後の後のことを見据えているのだろう。
星が正宗と合流を果たした頃、孫堅が娘の孫策と孫権を連れて参陣の挨拶をしに正宗のいる本陣を訪ねてきた。彼女達は目通りを求めると直ぐに陣所に通された。
孫堅達三人は陣所に入ると足を止めた。陣所内に豪族の当主やその名代達が簡易の椅子に腰掛けて所狭しの状態だったからだ。彼女達は気を取り直して中へ進むと陣所の最奥で豪奢な椅子に腰掛ける正宗の前へ進み出た。正宗の周囲には彼の主立った幕僚と荀爽がいた。
「車騎将軍、お久しぶりにございます」
孫堅が挨拶をすると後ろに控える孫策と孫権も拱手し挨拶した。孫策は少し遅れて挨拶した。孫堅は顔を後ろに向け孫策に半目で睨んだ。憮然とした表情の孫策は母・孫堅の無言の剣幕に苦笑いをした。
「孫文台、健勝そうで何よりだ」
「ありがとうございます」
孫堅は過日の正宗との出会いの時と違い武人らしい荒々しく精悍な雰囲気を放っていた。正宗も孫堅の様子の変化に一瞬戸惑っていた。
「車騎将軍、此度は長沙郡より一万二千の兵を連れて参りました」
孫堅は正宗に力強く返答した。彼女は武勇で太守にまでなった傑物ではある。それだ
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