第166話 襄陽城攻め前夜1
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々にか」
正宗は顎に手を当て考える仕草をすると酷薄な笑みを浮かべ荀爽を見た。彼にすれば荀爽の頼みを聞いてやる謂われなどない。
「いいだろう。ただし、交換条件がある」
「交換条件にございますか?」
「そうだ。お前の顔を立てる代わりに、余に少し便宜を図ってくれてもいいだろう?」
「どのような内容でしょうか?」
「我が妻・袁本初を揚州刺使に。荀文若を揚州の九江郡太守に任官出来るように奏上して欲しい」
「揚州? でございますか?」
荀爽は一瞬困惑した表情に変わった。刺使・太守とはいえ辺境である揚州の地方官の役職を希望していることが驚きのようだった。
「その程度であれば口利きを吝かではありません。姪にお心遣いいただき叔母として感謝いたします」
荀爽は正宗に丁寧に拱手して返事した。彼女としても姪に太守の官職を宛がうことには抵抗がなかったのだろう。
「荀侍中、約束は守らせてもらう。伊斗香、劉j殿と劉景升殿の夫は拘束し連行せよ」
「逃げられた場合は如何いたしますか? 宜城と襄陽は近いです。襄陽城に逃げ込まれる恐れがあります」
伊斗香は正宗と荀爽を順に見て聞いた。正宗は視線を荀爽に向ける。
「その場合致し方ありません」
荀爽は伊斗香に言った。
「宜城の件を進める前に斥候からの報告を受けるとしよう」
正宗は控える近衛兵に声をかけ、斥候を呼び出した。しばらくするとそそくさと斥候の兵達が入ってきた。彼らは正宗の前で片膝をつき、拱手をすると話はじめた。
斥候の兵達の報告ではこの辺りには蔡一族どころか住民が居なくなっているとのことだった。彼らは人気が無いことに違和感を覚え、次の目標の村まで調査範囲を広げたらしいが結果は同じだった。正宗軍による蔡一族が治める村への襲撃が幾度となく行われた結果、蔡一族が危機感を抱き逃げ出したようだ。それと昨晩の蔡瑁軍の襲撃は正宗軍の襲撃のみが狙いではなかったということだ。
「朱里、今後はどうすべきだ」
「予定より計画を切り上げ襄陽城に転進すべきと思います」
朱里は即座に意見した。
「まだ本隊は来て居ないぞ。本隊は一月もすれば荊州に到着するはず、それを待ってからでも遅くないのでないか?」
「それでもです。昨晩の我が軍の勝利の知らせは荊州の民の口を伝い豪族達の耳にも届くことでしょう。蔡瑁軍は我が軍の反撃で壊滅状態でございました。直ぐに野戦をしかけるだけの余力はないと思います。ここで襄陽城を囲めば物資の補給は不可能になります。また、この機会に荊州の民と豪族達に我が軍が蔡瑁軍に勝利したことを喧伝するべきです」
朱里は正宗に意見した。
「それがよろしいと存じます」
伊斗香は口を開いた。
「正宗様が襄陽城に向け出立すれば、蔡
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