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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十七話 反撃
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「総参謀長、帝国軍に反転攻撃をかけよう」
「反転攻撃ですか? しかし……」
上手く行くとは思えない、口籠るとビュコック司令長官が分かっていると言う様に頷いた。
「ヤン提督とウランフ提督に足止めをさせる」
「……」
「帝国軍は一隊を迂回させて後方を突こうとするだろう。そうする事であの二人を撤退させた。今回はそれを狙う」
「……帝国軍の一部隊を取り込み否応なく戦闘に引き摺り込もうという訳ですな」
私が確認するとビュコック司令長官が満足そうに頷いた。狙いは分かった。だが上手く行くだろうか? 帝国軍もそれは警戒している筈だ。それに政府からの命令に背く事になる。その事を問うと司令長官が“分かっている”と言った。
「既に四十時間近く逃げている。帝国軍が我々は逃げるのに徹していると考えてくれれば……」
「なるほど、付け込む隙が生じるかもしれませんな」
司令長官の狙いが分かった。帝国軍の油断に付け込もうというのか。今なら上手く行くかもしれない。その可能性は決して小さくないだろう。
「それにこのままでは帝国軍に挟撃されるのを待つだけだ。ハイネセンに戻る事は出来ん。政府の命令に応える事は出来ん」
「確かにそうですな。……上手く行けば帝国軍を各個撃破出来るでしょう。それが無理でもここで帝国軍に一撃を与えておけば挟撃は避けられます」
「うむ。ハイネセンに戻って最後の一戦を挑む事も可能だ」
「はい」
「なによりこのままやられっぱなしでは兵の士気も上がらん。それにわしにも意地が有るのでな、給料泥棒だの役立たずの宇宙艦隊司令長官だのと言われるのは御免だ」
司令長官が顔を顰め、そして笑った。
「小官も同感です、この辺りで給料分の仕事をしますか」
「うむ」
チャンスは一度だけだ、二度も同じ手が通じる相手ではない。作戦を敵に傍受されてはならないから連絡艇で指示を出す事になるだろう。
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