第六十三話
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て事、……なんだよな」
俺の言葉に彼女は頷く。
「教えてくれ、その確立はどれくらいなんだ」
「そんなの私に分かるわけないわ。異形のものが尖兵としてどれだけの量のサイクラーノシュの寄生を送り込んだか、私を追うことが彼らにとってどれくらい重要かによるんじゃないかしら」
「姫と異形のものは戦っていたんだよね」
「そうよ。とはいっても、圧倒的な戦力差を見せ付けられていたわ。仲間の裏切りによってね。私たちの種族全員が総力をあわせれば、奴らとであっても互角以上に戦うことができたのに、長きに渡ってくだらぬ権力闘争を繰り返していた事が
仇となったわけだ。……滅び行く種族とは案外そんなものなのかもしれないけれどね」
吐き捨てるようにつぶやく。
「その対抗勢力である姫たちはどういう状況になっているんだ」
「……父と第一皇子である私の兄が指揮していた。……父の指導のもと、各地に散らばった一族を集め、配下の族や使い魔達を終結させ反撃を行おうとした時に、あの男が、兄が裏切ったのだ」
握った拳に、ほんの少しだけれど力が入るのが分かった。
「あいつは異形のものと通じていた。わざわざ私たちが集まるように誘導し、罠にはめたのだ。……集まった仲間たちがあの混乱のなかでは分からない。おそらくほとんどが殺害されたか捕らえられたのだろう。父もやつらの凶刃に斃れた。指導者を失った組織は惨めなものだ。その後は坂道を転がり落ちて行くようなものだ。ただただ、敗走し、逃走するだけだ」
「……そうか。うん、ごめん。辛いことを聞いちゃったね」
「ふん、辛かろうがどうだろうが関係ない。所詮、どうあがいたところで過去は変わらないのだから」
内心はどうなのかわからないけれど、平然とした顔で答える王女。
クールだな。
「ということは異形のものと戦う勢力にとって、王女が一番大事な存在ということだよね。当然ながら、やつらにとっても姫の生死は一番の関心ごとになるわけだ。君が生きている限り、反乱分子は集う可能性を持つということなんだから」
王女が生きて異世界に逃走している事実。そして、強力な結界のために、二つの世界を行き来し王女を追跡できるのは寄生根しかない。そうなった場合、たとえ困難であったとしても追跡者をたった一体しか遣さないわけがない。
つまり、まだ敵は存在しているってことだよ。
そして、ニュース報道より早く、ネットの掲示板で殺害された教員の名前が書き込まれた。
俺たちの高校の生徒指導教員、戸次空次だった。
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