第六十一話
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そういえば王女からは向こうの世界の話をあまりしてもらっていない気がするな。話したくないんだろうか?
「帰ってきたのか? 」
振り返るとアニメキャラクターのパジャマを着た王女が立っていた。
可愛いお姫様の格好をした少女と短パンでリュックを背負ったデブのはげ親父のコンビのイラストがプリントされている。「禿げ親父は王子様」とかいう結構人気の子供向けアニメらしい。
シャツ自体、原色のパジャマだけど王女は何故か気に入っているみたいだ。
妹のささやかないたずらなんだけどどうやら王女には通用しなかったようだ。
外に着て行くには恥ずかしい服なんだけど、王女が着るとなぜか可愛く見えたりする。
「ああ、ただいま。やっとバイトが終わったよ。……お腹すいただろ? 飯でも食べようよ」
そう言って俺は冷蔵庫にしまった食材を再び取りだした。
「いろいろ買ったんだけど、どれ食べる? 」
「おにぎりは真アジ一夜干しとワサビのりがいい。あとひるげ」
「了解。お湯はポットに入ってるから直ぐ出来るよ」
「うん」
そういうと王女は流し台で手を洗うと、部屋へと戻っていった。
俺はお椀にインスタント味噌汁を入れるとお湯を注ぐ。ひるげは安売りしてないけどどうも王女のお気に入りらしい。で、良く買わされる。
俺もその味は嫌いではない。しかし、どういうわけか、これだけは特売品にならない。いつも定価売りなんだな。理由はわからない。某国の陰謀ではないかとさえ言われている。
部屋の真ん中に置いたちゃぶ台の前に腰掛けて、王女はテレビを見ていた。
俺はおにぎりを机の真ん中にどかりと置き、お椀と箸を王女の前に置く。
「ありがと」
「よっし、じゃあいただきます」
俺も王女の向かいに座り、食べ始める。
王女は味噌汁を一口すすり、おにぎりのパッケージを剥がすんだ。でも、何故かうまくできない。順番通りにすれべできるのにこれがなぜかできず、ご飯がぐじゃぐじゃになる。
バラバラになったご飯をお椀に投入する。ワサビのりの味噌汁雑炊のできあがり。それをスプーンで混ぜ混ぜし、すくって食べる。
「どうかしたのか? 」
と不思議そうな顔をして俺を見る。
「いや、変な食べ方をするなって思って」
「これはこんな食べ方をするんじゃないの? テレビでやってたぞ。みんなこんな食べ方をするんじゃないの? 」
とまじめな顔で言う。
「それは間違いだよ……。それはねこまんまって言って、犬や猫のえさみたいな簡素なものって言われているんだよ。おまけにスプーンで混ぜるその食べ方は姫みたいな子はやっちゃいけないし、やめた方がいいよ。テーブルマナー違反で叱られるところだぜ」
「……ふうん。うむ、そうなのか。それは知らな
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