第六十話
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う、……うん。
寒い……。
横になっているのが分かる。
ベッドで寝ているんだろうか? いや、ベッドは最近王女に独占されて、俺はソファーで寝ているんだった。……でもベッドにしてはなんだか固い気がする。いや、固すぎる。おまけ冷たいんだ。まじで外にいるんじゃないかって思うほどの寒さ。底冷えするんだけど。
「うむむむん」
俺は寝返りをうった。
ガチャンと音がして、頭部に激痛が走る。
「いってぇ」
何か固い物に頭をぶつけたみたいだ。痛みで目が覚めた。
辺りを見回す……。
白い大きな室外機。水垢がだらりと垂れた線をいくつも作っている。
上を見ると洗濯ロープにぶら下がったままのシャツが二枚。
横をみたら掃きだし窓。反対側を見たらアルミ製の柵ごしに夜の街が見えた。
手を床に置いてみる。ただのコンクリートじゃん。
はい、どうも俺は自分のアパートのベランダに寝ていた訳ですな。
ふと気付くと、何か臭ってくる。すごく臭い。何か腐ったような臭いが漂ってくる。
そして、それは俺の体から発される臭いだと気づくまでそれほどの時間を必要としなかった。。血と体液と糞便が混じった異常なまでの異臭だ。
うん、こんな状態の俺は外に放り出されたんだな。うん。
頭がガンガンする……。これは王女にぶん殴られたせいだろうな。なんか一発殴られたところまでは意識があったけど、それ以降は完全に記憶が無い。痛みがある箇所はどうも一カ所だけじゃない。あちこちが痛いってことは、王女にタコ殴りされたってことだ。
たしかに、意図していなかったとはいえ、王女にキスしまくったもんな。
しかも2回目だから完全に切れてしまったようだ。あの怒りに燃えた王女の瞳。殺されなかっただけましかも。
携帯電話をポケットから取り出す。
血まみれになっているけど、防水防塵機能のおかけでとりあえずは生きているみたいだ。
ディスプレイをタッチすると画面が光る。
時間は2:20。
その時間に焦りを感じた。
今からシャワーを浴びて着替えてなんとか3:00だ。
バイトにはぎりぎりの時間。
俺は慌てて起き上がり、部屋の中を覗く。
部屋の中は電気が点いていて、中でソファーに腰掛けた王女の姿が見えた。
俺は扉を開こうとするが、鍵が掛かっている。
トントンと窓を叩くと、王女が気付いてこちらを見る。
「窓を開けてくれ」
俺と目が合ったのに、彼女はフンと鼻で笑うと視線を逸らした。
「おいおい、姫。開けてくれ」
バイトまで時間が無いんだ。焦りから強く窓を叩く。こんな時間に近所迷惑だし苦情が来そうだけど仕方がない。バイトに穴を開けるわけにはいかないんだから。
しかし、彼女はわざと聞こえないふりをしている。テレ
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