第五十九話
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
俺と王女はなんとか街へ帰ることができた。
予定と違ったのは、亜須葉がいなかったことだった。
王女は妹をからかってやろうと楽しみにしていたようで、車から十さんしか降りてこなかったことに結構驚いていた。
「あのブラコンの女はどうしたんだ」と十さんにしつこく尋ねていた。
十さんは困った顔をしていたけど、
「亜須葉様は、柊様が無事であることが分かったので、後は私に任せると仰っておりました。少し最近食欲とかが落ちていて今ひとつ状態が優れないのです。夜風に当たるのもあまり良くはないと医師より言われているようです。ですので、今回は私のみが来てしまい、申し訳ございません」
「いやいや、十さんが謝ることなんて何も無いんだから。全部俺が非常識なだけだからね。夜中にこんな場所に迎えに来いって言ったんだから。非常識だったけど、ちょっとトラブルに巻き込まれていたんで、タクシーを呼ぶわけに行かなかったからね」
「……それについては何もお聞きしません。ただ、お困りになった時はいつでもお言いつけください。少々のトラブルでしたらなんとかいたしますので」
少々といってもかなりの事でも解決してくれそうなんだけどね。十さんの場合。
「なあ十よ、お前は何者なの? 前から気になっていたけど、お前からは普通の人間とは違う臭いがする。シュウや亜須葉とは違う臭いがな。良かったら教えてくれない? 」
王女がズケズケと聞く。
「ご勘弁ください、姫様。若い頃、ちょっとやんちゃだっただけです。今ではただの厳つい外見のおっさんでしかありませんからね」
そう言って笑う。
「そうなのか。まあ言いたくないなら、聞かない。しかし、ひとつだけ確認させて。……お前は、シュウの味方であることは間違いないのよね」
「……私は亜須葉様に仕える身。主が大切にするものは、何よりも最優先でお守りします」
「じゃあ信用してもいいわね。亜須葉はシュウのことが好きみたいだから。自分の兄だからブサイクに慣れていて気にならないのかもしれないけど、物好きだわ」
その言葉には苦笑いのみで十さんは答えた。
否定してくれよ、と俺は少し思った。
十さんは基本的に無口で、必要でないことは昔から話さなかった記憶がある。なんかハードボイルド小説の主人公みたいに渋い感じだし、ちっちゃい頃は怖いけど格好いいなって思っていた。あこがれだったけど、直ぐにどう考えても俺には無理だと気付いてしまったけど。
俺の思考を無視するかのように、王女は後部座席から身を乗り出して十さんに話かけ続ける。
「お前は何故、亜須葉の世話をするようになったの? シュウの親父の命令なのか」
「そうですね。亜須葉様が小学校に入学される頃にお世話をすることを命じられましたね」
「ガキの相手は大変
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ