第二章 【Nameless Immortal】
壱 バカばかりの日
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わないからこれくらいは許せ」
「ああ。そういう事言う人もいるみたいだね」
実情を知らない、というのは時として残酷な人間を作り出す。
大多数の人間は汚染獣の姿を見ていない。転がる四肢を、死体を見ていない。
上がった悲鳴も、鼓舞する震えた声も、荒れた外延部も、こびり付いた血潮も。何一つとして。
念威操者がとった記録としては残っていても残酷な物は一般には公開されていない。
わざわざ労力を割いてグロテスクなそれを探し実情を見ようなどという人間はいない。
だからシェルターに避難していた人間が知る惨状はせいぜいが記録上に記された数字だけだ。
汚染獣の脅威も事が終わった後に映像媒体を通した姿でしか見ていない。
新聞欄に乗った殺人記事。それよりは身近で身につまされる。その程度。
被害が出たといっても外延部の一部とそれに隣接する建物だけ。普通に暮らしていれば見る機会はない。
死者数も都市全体の人口からみれば零カンマ以下の%。割合で言えば二十クラスで一人いるかいないか。
まして休業中だ。花が生けられる席を見るわけでもない。
事が終わってしまえば非日常の一大イベント。そう捉える学生も多くいた。
だから、ロクでもない発言や噂も裏では多く出た。
思ったより被害が無くてがっかりした。
もうちょっと死んでくれれば休みがもっと増えたのに。
被害の写真を見て正直ワクワクした。
二年前の戦争に、今回の幼生体。弱い穀潰しが間引きされただけ。
もう一回くらい襲って来ないかな。
表だって発言する者こそいないがそういった言葉が聞こえることがあった。
「友人知人が死んでないなら他人事ってことなのかな」
「だろうな。噂って言えばアホなのも色々聞いたな。ツェルニ七不思議とか陰謀論とか」
やれ、畜産課の畑にある案山子の中には夜な夜な動くものがある。
やれ、都市を裏で操る権力者とその組織がある。
やれ、機械科は既に超電磁砲を実用化している。
やれ、変態による変態のための研究会がある。
やれ、光るケモミミの女の子を見た。情報求む。
「獣耳は一体どこにあるのか見てみたいと思わないか。耳は二つか四つか」
「どうでもいいよ。けどそれだけ聞いてると平和だね。意外とみんな暇なのかな」
「旧版や改訂版にレギオス七不思議とかもあったな。一体誰が流しているんだか」
無自覚な元凶の一端をレイフォンはアホを見る目で見る。
なお、レイフォンもアホなのでここにはアホしかいなかった。
アホがアホな話をしてアホがアホを憐れんでいた。
「暇だね」
アホが言った。
「暇だな。ならどうでもいい話するか。レイフォン、さっき聞いた怖い話でお前をビビらせてやる」
「いいよ。出来
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