第二百三十話 本能寺へその三
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「それがしもよく知らないのです」
「そうなのか」
「得体の知れぬ者達です」
「同じ伊賀者でもか」
「あの家は昔からいた不思議な者達で」
「ううむ、怪しいのう」
家康も話を聞いて言った。
「それはまた」
「伊賀者といっても付き合いはありませぬ」
「完全にか」
「はい」
こう信康にも話すのだった。
「どうにも」
「それがわからぬな」
「何をしておるのか。ただ」
「ただ?」
「あの者達の忍の術は違いまする」
服部達のそれとはというのだ。
「我等は甲賀や風魔と同じく体術を使い隠れ逃げることを主にしていますが」
「百地の忍術はか」
「何か違う、強いて言うのなら」
こう前置きしてだ、服部は信康に話した。
「左道めいているとか」
「左道か」
「妖術の様な」
そうしたものだというのだ。
「そう聞いています」
「そうなのか」
「特に棟梁の百地三太夫に」
まず挙げるのはこの者だった。
「その下にいる石川五右衛門、楯岡道順、音羽城戸はです」
「その四人はか」
「実に得体の知れない」
「そうした者か」
「全てが謎に包まれています」
そうした者達だというのだ。
「拙者も知りませぬ」
「そうなのじゃな、それでじゃな」
「はい、その者達さえ知らぬ道です」
「そうか」
「得体が知れぬ者達故話しておりませぬ」
その道のことはというのだ。
「いざという時はその道をです」
「父上の為にじゃな」
「使います、また警護は我等がします」
伊賀者がというのだ、服部が率いる。
「必ずや駿府まで」
「頼むぞ、半蔵」
家康はその服部に笑顔で応えた。
「その時は」
「お任せ下さい」
「そしてです」
「我等もおります」
四天王も名乗りを挙げた。
「ですから何かありましても」
「殿はです」
「必ず駿府まで戻れます」
「我等が命にかえて」
「そうじゃな。わしには御主達もおる」
家康は彼等にも声をかけた。
「わしは果報者じゃ、優れた者達が多い」
「何を仰いますか」
大久保彦左衛門も言う。
「殿こそが我等にです」
「わしがか」
「過ぎた方です」
主として、というのだ。
「まさに」
「そうかのう」
「はい、天下一の殿です」
「ははは、それは褒め過ぎじゃぞ」
「褒め過ぎではありませぬ」
それは決してというのだ。
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