第二百三十話 本能寺へその一
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第二百三十話 本能寺へ
家康は信康にだ、穏やかな笑顔で言っていた。
「ではな、そなたもこうして普通にこの城で政を見られる様になった」
「だからですな」
「留守は任せる」
「では父上はこれより」
「堺に行って来る、この者達と共にな」
四天王や鳥居、大久保、それに服部を見ての言葉だ。
「少し楽しんで来る」
「さすれば」
「ではな、しかしのう」
「しかしとは」
「うむ、堺じゃが」
家康がここで言うのはこれから行くその町のことだった。
「あそこには行ったことがあるが」
「よき町ですな」
「賑やかでのう、それにな」
「明や南蛮からも人が来ていて」
「そちらも楽しめる。ただな」
ここで家康は信康に顔を曇らせて言った。
「気になることもある」
「と、いいますと」
「南蛮人といえば耶蘇教じゃな」
「あの伴天連の者達が教えている」
「それじゃ、あの教え自体はよいとして」
「何かありますか」
「うむ、大抵の伴天連の者達はよき者じゃが」
しかしというのだ。
「中には悪い者もおるとか」
「それは仏教の坊主もですな」
「そうじゃな、高僧もおればな」
「とんてもない生臭坊主もいますな」
「そうじゃ、それはどうも耶蘇教でも同じじゃが」
家康は顔を曇らせつつ話していった。
「あそこの坊主はまた特別酷いらしい」
「仏教の坊主達よりも」
「確かに延暦寺の坊主の中にはどうかという者もおったが」
「まさかその延暦寺の坊主達以上に」
「あの天海や崇伝も怪しかったが」
「その天海達の様な」
「うむ、左道を使う者達もおりじゃ」
そしてというのだ。
「そのうえ耶蘇教を使いその国を狙い奪う」
「何と、それはまた」
「性質が悪いのう、腐り方も比叡山どころではないともいう」
「想像がつきませぬな」
信康にとっては比叡山の腐り方が最も酷いものだ、それより遥かに酷いと言われても想像がつかなかった。
それでだ、彼は父にこう言った。
「何処までのものか」
「わしもじゃ、しかしな」
「それは事実でありますか」
「どうやらな、それにな」
「それにとは」
「吉法師殿もそのことはご承知じゃ」
耶蘇教の伴天連達のこと、そして耶蘇教のことをというのだ。
「既にな」
「上様も」
「うむ、耶蘇教の者の中にはこの国を狙っている者もおる」
「恐ろしい話ですな」
「天下が一つになってもな」
「それでその泰平が続くかといいますと」
「そうでもない」
このことを我が子に話すのだった。
「これがな」
「そうなりますか」
「だからじゃ」
「泰平を守る為には」
「奸賊共には気をつけることじゃ」
「そして天下を守るのですな」
「そういうことになる、御主も同じじ
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