2部分:第二章
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てしまった。
「痛たたた・・・・・・」
「あんた何してんのよ」
美晴が呆れた声で千秋に声をかける。
「石に躓いて」
「仕方ないわね。起きて」
「うん」
その時だった。上から何かが落ちてきたのであった。
千秋は起き上がった。起き上がった丁度その時にそれは彼女のすぐ前に落ちてきた。見ればそれは鉄筋であった。もう少しで彼女の頭に落ちてくるところであった。
「何、これ」
「上からだから」
見上げると上でビルの工事中であった。それで鉄筋が誤って落ちてきたらしい。千秋はその鉄筋を見て呆然としている。美晴が上を見ると丁度工事をしているところであったのだ。
「何かの間違いで落ちたみたいね」
「危なかった・・・・・・」
「井戸のあれね」
美晴は鉄筋を見下ろしながら呟いた。
「これって」
「じゃあ本当だったんだ」
千秋は呆然と鉄筋を見下ろしながら言った。
「あの井戸のことって」
「よく助かったわね」
美晴はそんな千秋に対して言う。
「もう少しで」
「頭潰れて・・・・・・ってまさか」
「本当に首がなくなってたわよ」
美晴は言う。
「もう少しで」
「助かったわね」
「うん。けれどこれって」
千秋はここで気付いた。
「助かったのはやっぱり」
「御地蔵様のおかげね」
「うん」
千秋は美晴の言葉に頷く。
「助かったわ。あと一歩ってところだったけれど」
「そうね。死ぬところだったわよ」
「最初は信じてなかったわよ」
こう言った。
「まさか。こんなことって」
「あるのよ」
しかし美晴はそう千秋に言う。
「こういうことってね。世の中には」
「ええ」
「わかったわね」
「わかりたくなかったわよ。こんなことって」
自分の頭に手をやる。そうして本当に頭があることを確かめる。
「あるわ」
「そしてそういうこともあるのよ」
今度は千秋が助かったことについて言う。
「怖いこともあるけれど助けてくれるものもあるのよ」
「そうなの。ところでさ、美晴」
「何?」
「随分物知りだけれど何でそんな言葉知ってるの?」
「教えてもらったのよ」
美晴は顔を強張らせながらもぽつりと述べた。
「御婆ちゃんにね」
「凄い御婆ちゃんね」
千秋は今度はそのことに驚いていた。何か朝から驚くことばかりだと思いながら。
「それはまた」
「そうかしら」
「そうよ。けれど」
そのうえで述べる。
「おかげで助かったわ。今度御礼を言わせて」
「ええ、いいわよ」
ようやく少しにこりと笑うことができた。何はともあれ千秋は命を取り留めた。それから彼女は御地蔵様と美晴の祖母を非常に大切にした。その理由は井戸にあったのであった。
その井戸はまだ残っている。しかしもう覗き込む者はいない。誰
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