巻ノ十九 尾張その一
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巻ノ十九 尾張
家康は甲斐、信濃を攻めていたがそれは常ではなかった。随時であり休み休み攻めていた。それでこの時はだった。
駿府に戻りそこで政をしていた、三河や遠江、そして駿河だけでなくだ。
甲斐や信濃の領地にした場所も治めていた、その政はというと。
「税は今より軽く法は公平にな」
「三国を治めている様に」
「そうしてですな」
「甲斐や信濃も治めていく」
「そうされるのですな」
「うむ、どの国の民もわしの民じゃ」
それならとだ、家康は家臣達に微笑んで答えた。
「堤や道も整えるが」
「それは年貢の後で」
「こちらが銭を出して」
「そうせよ、その普請の際は働かせている人夫達には白米をふんだんに食わせその者達の年貢は軽くしてやれ」
家康が普段からしている様にというのだ。
「苦しませぬ様にな」
「殿はいつもそうされますな」
「ご領地では」
「民には仁ですか」
「それを以てあたるべきだと」
「仁と法じゃ」
その二つが大事だというのだ。
「このうちどれか一つがなくとも治められぬ」
「国は」
「そして民も」
「だからじゃ」
それでというのだ。
「わしはこの二つを忘れぬ様にしてな」
「政をされている」
「そういうことですな」
「公平に法を敷いて用い」
まずは法の話だった。
「そしてじゃ」
「民を働かせても苦しませぬ」
「戦の際も手を出さぬ」
「働いてもらえば褒美を弾む」
「殿のいつも通りのやり方で、ですな」
甲斐も信濃もというのだ。
「治められるのですな」
「民を忘れて我等はない」
家康ははっきりとこうも言った。
「だから治めていくぞ」
「これまで通りのやり方で」
「そうされて、ですな」
「手に入れた領地の民達も」
「無事治めていきますか」
「そうする。しかし信玄公の政はかなりよかった様じゃな」
家康はこうしたことも述べた、今度は神妙な顔になっている。
「甲斐も信濃もな」
「ですな。田畑はよく開墾され」
「堤も道も整っております」
「町も栄え賑わいがあり」
「米以外にも様々なものが植えられております」
そしてそこから様々なものが作られているのだ。家康は甲斐や信濃のそうした状況を見て家臣達と話しているのだ。
「そうしたものを見ていますと」
「信玄公は実に見事な方でしたな」
「噂には聞いていましたが」
「噂以上です」
「わしも見習わないとな」
家康は袖の中で腕を組み唸る様にして言った。
「そして信玄公以上の政をしたい」
「ではよりよき政を」
「甲斐や信濃においても」
「そうされますか」
「そのつもりじゃ、では次の戦まで収めた場所を治めていくぞ」
こう家臣達に言い政をしていくのだった、
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