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鶴の舞う空へ 
第1部 異世界へ
3.六年前のあの日
鶴の舞う空へ
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従者を亡くしたのにもかかわらず、こうおっしゃりました。『皆、よく生き残ってくれた。私たちの国はなくなってしまった。しかし、私はあきらめぬ。私に時間をくれ。私は必ず強くなってこの国を取り戻してみせる』と。そして、二年前に初めて佐伯国に反旗を翻し、敗北を幾度も経てやっと昨年の冬の戦で初勝利を得、今やっと三連勝しているのです。しかし、私たちはまだ国の半分も取り戻せていません。しかしながら、戦う兵は皆信じています。鶴姫様ならば国を取り戻してくださると。ちなみにここは千様の生家をお借りしているのです。ここは豊洲国の端のほうです。」
「.....そうだったんですか。そんなことが...。」
海斗は六年前の鶴姫の気持ちを考えようとすると、胸が痛くなるのを感じた。そして、今も強い信念の元で生きているのだと知った。あの姫君のまっすぐな瞳は彼女のまっすぐな心の表れかもしれない。そして、その姫を守って死んでいった者、生き残った者それぞれの思いを考えると、海斗はなぜか涙が出そうになった。そんな海斗を見た風早は静かに告げた。
「海斗、この剣をとれば、戦が終わるときまで離せなくなるでしょう。それでもいいのですか?」
海斗は少しうつむいて考えた後、まっすぐな目で風早の目を見てこう返した。
「さっきまで俺は直感のような何かで、運命をあの人に感じてこの世界で戦おうと思っていました。しかし、今は...。うまくはいえませんがこの国の人たちのためになにかできることをしたいです。それに、こんなに怪しい身なりの俺を信じて助けてくれたあの姫様に恩返しするつもりで戦おうと思います...。」
海斗がそういうと、風早は優しく微笑み、はい、と一言返した後、鎧一式を彼に託した。

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