暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
生の罪科 3
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 声が聴こえる。
 私に語り掛ける声。
 ロザリアの……アリアの、声?
 『クロスツェル』
 どうして?
 私はベゼドラを利用して貴女を傷付け苦しめ、貶めた賎しい悪だ。何故私に、そんな声が聴こえる?
 幻聴? でも……
 『クロスツェル……死なないで……お願い』
 「……アリア?」
 優しい声が聴こえる。風がふわりと流れるように。
 そして
 『……死ぬな。絶対に死ぬな!!』
 幼い声が激しく胸を叩いて、風と共に消えた。
 「ロザリア……」
 取り残された静寂。
 私に……生きろと?
 お母さんとテオを殺し、たくさんの生命を奪い、貴女を汚して殺しかけた私に、それでも生きろと?
 何故と問い掛ける寸前、記憶の隅に甦る少女の声。
 「……そうか。私は、何も伝えていなかった」
 逃げた。
 自分の罪を口実にして、ロザリアから。
 ロザリアへの想いから、逃げていた。
 ロザリアはそれに怒ったんだ。
 必要な事だったのに。最低限の事だったのに。何よりも大切にしなきゃいけなかったのに。
 「ロザリア……私は、貴女を……」
 どんなに汚れていても。いつか罰で殺されるとしても。この気持ちから目を逸らしてはいけなかった。
 約束したじゃないか。ロザリアを導くと。
 あの約束だけは命に代えても果たさなきゃいけない。
 ロザリア……貴女を、もう一度捜しに行く。世界という名前の裏路地に、きっと貴女を見付け出す。そして伝えよう。ごめんなさいと。
 それから……

 貴女だけを、愛している と。


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