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逆さの砂時計
生の罪科 3
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 女神アリアよ、早く私を浄化してください。
 私から、ロザリアを護って。
 今度こそ、善を救って……早く……!

『苦しいか』

 ……苦しい。
 もう、嫌だ。

『逃れたいか』

 笑顔が見たい。
 ロザリアの笑顔を、全部私に向けて欲しい。

 ダメだ! 彼女を殺してしまう!!

 でも、嫌だ。
 あんな風に誰かと親しむロザリアの姿は、もう見たくない。
 私だけを見て。
 私だけに笑って。

 どこまで罪を重ねれば気が済むんだ、私は!!

 でも、私は……

『その悩み、俺が引き受けてやろう』

 ……引き受け、る?
 罪を……この、どこまでも腐りきっている魂を?
 ……それは……

 それもまた……罪であると、しても……
 ならば……、どうか……

 ロザリアを、私から、護って。

 私には、もう 耐えられ ない 。

 どう、か  ロザ リア を  たす け  て



 早朝の教会。
 意識は、はっきりしている。

 隣で眠っているのは、私と契約した悪魔ベゼドラ。
 私の欲をすべて引きずり出して、そして、女神アリアを。
 ロザリアを、この体で、汚した。

 汚した。
 傷付けた。

 あの、無垢な少女を。
 崇めるべき絶対の女神を。

 汚らわしい、この体で……っ!

「ぐっ……ぅ……」

 泣いていた。
 ロザリアはずっと泣いていたのに!
 何故、くり返した!?
 今度こそ……クロスツェルとして、今度こそ善を助けたいと!
 あれだけ思っていたのに!!

「お母さん、テオ……私は……僕は!」


『クロスツェル』


「…………────っ!?」

 声が、聴こえる。
 私に語りかける、静けさと穏やかさの中に悲しみが宿った、女性の声。
 ロザリアの……アリアの、声?

『クロスツェル』

 どうして?
 私はベゼドラを利用して貴女を傷付け苦しめ貶めた、(いや)しい悪だ。
 その私に何故、そんな声が聴こえる? 幻聴?

 でも。

『クロスツェル……。死なないで……お願い』

「……アリア?」

 優しい声が聴こえる。
 そよ風がふわりと髪を撫でるように。
 そして。


『…………死ぬな。絶対に! 死ぬな!!』


 幼い声が激しく胸を叩いて、風と共に消えた。

「ロザリア……」

 取り残された静寂。

 私に……生きろ、と?
 お母さんとテオを殺し。
 たくさんの生命を奪い。
 貴女を汚して殺しかけた私に。
 それでもまだ、生きろと?

 何故、と問いかける寸前、記憶の片隅に甦った少女の怒声。

「…………そう、か。私
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