生の罪科 3
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、私の……
「……ありがとうございます」
「あ、後は知らん! 知らんからなっ!」
付いて来るなよばーか! と赤面で言い捨てて、またも走り去る少女に……笑いが込み上げて来た。
なんだ彼女は。なんなんだ。
「ふ……ふふっ」
なんて綺麗で、なんて可愛い女の子なのか。
温かい。優しい。
浮浪児としてはレスターと同じ事をしている筈なのに、その行為を責める気にはなれない。
彼女は違う。悪じゃない。真性の善だ。
見た目以上、力以上に、心が綺麗だ。
「……だからこそ、彼女をこのままにしてはいけない」
助けたい。彼女を助けたい。
でも、何故かな。追い掛ける時間が少し……楽しくなった。
分からないもので、楽しい時間はそれから割と直ぐに終わった。
さすがにガラス瓶を刺された時は痛かったが、彼女の……ロザリアの手を離さなくて良かった。
ロザリアは教会に居る。もう、彼女が容赦無い飢えや無慈悲な暴力に曝される心配はない。
「これ? まじでこれ着るの?」
手渡した純白の袖無しワンピースを掲げて、ロザリアは不満そうに顔を歪めた。
彼女の普段着が少ないのは可哀想だと信徒に指摘されて追加購入した物だが……飾りが一つも無いのはさすがに味気無かっただろうか。
「これじゃ汚れがめっちゃ目立つ。掃除の時とか、いちいち着替えろって言うんじゃないだろうな。だとしたら時間と作業着の無駄だぞ」
なんと。ロザリアは合理主義だった。
「汚れたら洗えば良いのですよ。……気になりますか?」
「そりゃ……こうまで白いのが汚れるのは、ちょっと」
しかも、ちゃんと女の子らしい。
あまり褒められたものではない口調や仕草も、恐らく経験上の対男性用防衛策転じて習性化したのだろう。ご令嬢の振る舞いを徹底教育したら、案外あっさりと身に付けるかも知れない。
などと思っていたら
「ま、いっか。汚さんようにできる限り気を付けて着るよ。ありがと!」
にかっと満面の笑みが咲き誇った。
「……はい」
……必要無い。彼女はこのままで良い。
ご令嬢の慎ましい微笑みよりも、無邪気で汚れ無い子供そのものの鮮やかな笑顔が似合う。
もっと見たいな。
「なんだよ」
「え?」
……え? なんでロザリアに向かって手が伸びてるんだ?
私は、何を……
「?? 変な顔。熱でもあんの?」
背伸びした彼女の瞳に、目を真ん丸にした自分の顔が映る。額に ぴた と当てられた手の柔らかさで体が竦む。
なんだろう、このむず痒さは。
肩から上が物凄い高速で小刻みに振動してるみたいな錯覚。
頬が、熱い。
「い、いえ……なんでも、ありません、よ?」
「ふーん? 一応言っとくけど、病気になったって看病はしないぞ。
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