7部分:第七話
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は愛じゃない、憎しみなんだ」
憎しみ、という言葉にアニーが反応した。ブルッ、と身体を震わせた。
「僕は愛は受け入れられる。けれど憎しみは受け入れることはできない。それは何故かわかるかい?君は今の僕の言葉でそれがわかっている筈だ」
そう、アニーはわかっていたであろう。だがそれでもヘンリーは言った。
「憎しみを持つ者はそれにより自分を滅ぼしてします。そして他の人も。だから僕は憎しみを受け入れることはできないんだ」
「以前言っていたことだな」
ヘンリーは彼が自分の事務所に来た時に言った言葉を思い出していた。自分は人達の憎しみを消す為に弁護士になったのだと。訴訟社会であるアメリカにおいては実に難しいことであるのをわかったうえで。それを聞いて彼はヘンリーを気に入った。だからこそ事務所に置いているのだ。
「だから君を受け入れることはできない。そして君に言いたい」
「罪のことか」
所長はふとそう思った。その通りであった。
「君が今まで犯した罪を償って欲しい。それだけだ」
アニーは最後までそれを聞いていた。話を聞き終えるとまた身体を震わせた。そしてゆっくりと後ろへバックしはじめた。
「ヘンリー」
「大丈夫ですよ、所長」
彼が轢かれるのではないかと危惧した所長に対してそう述べた。
「しかし」
「心配は無用です。彼女はわかってくれました」
「本当かね」
「ええ。ですから安心して下さい」
「わかった。それでは君を信じよう」
「有り難うございます」
アニーはそのまま下がって行く。そして反転した。そのまま何処かへと去ってしまった。
「行きましたね」
「彼女は一体何処へ行くつもりだ」
「罪を償いに行くのでしょう」
「罪をか」
「はい。私の言葉が伝わったようですから」
「だといいのだがな」
「私は信じていますよ、彼女を」
「償うことをか」
「はい。ですが」
ヘンリーはここでその顔を哀しくさせた。
「彼女と会うのはこれが最後です。おそらくは」
「それはわかる」
所長もそれを聞いて頷いた。
「残念なことだな」
「そうですか仕方のないことです。罪を犯せば償わなくてはならないのはこの世の摂理ですから」
「だからこそ法律が、そして神の存在がある。そうだな」
「ええ」
彼は所長の言葉に頷いた。
「行きますか。全ては終わりました」
「そうだな。それでこれからはどうするんだ」
「明日はバイクでそちらに向かいます。当分はそれですね」
「そうか」
「ずっとかも知れないですが。今はアニーのことを思うと車は」
「わかっているさ、それについては何も言わない」
「有り難うございます」
「それに関しては君に任せるよ。私が言っても何にもならないだろう」
「すいません」
「ところで彼女はどうする」
「彼
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