7部分:第七話
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。今だに花の独身貴族さ」
「あらあら。じゃあ立候補してあげようかしら。花嫁候補に」
「今さっきタイプじゃないって言ったじゃないか。それに恋人もいるんだろう?確か年下の」
「よく知ってるわね」
「君自身から聞いたことじゃないか。離婚した後暫くしてから」
「記憶力いいのね、酔ってるのに」
「職業柄ね。いらないことも覚えてるのさ」
「あと減らず口もね」
「ふふふ」
そんなやりとりをしながらヘンリーの自宅に着いた。彼はミスティをリビングに案内するとキッチンのワインボックスを空けてそこからボトルを二本取り出して来た。
「とりあえずは二本でいいかな」
「ううん」
だが彼女はいささか不満そうであった。それを見てヘンリーはまた動いた。そしてもう二本持って来た。
「じゃあこれで」
「いいわ」
それでようやく頷いた。四本のボトルをテーブルの上に置くと今度はチーズを持って来た。ハム等も出す。
「あら、チーズだけじゃないのね」
「たまたま冷蔵庫にあってね」
「そうなの。何か豪勢になってきたわね」
「そうかな。ごくありふれた肴だと思うけれど」
「一品より二品ある方がいいじゃない。そういうことよ」
「そんなものかね」
「私はそう思うけれど。じゃあ早速頂くわね」
「どうぞ」
グラスも出した。ミスティは自分で栓を抜くと早速飲みはじめた。すぐに顔が赤く染まっていく。
「美味しいわね、やっぱり」
「気に入ってもらえたかな」
「ええ。幾らでも飲めるわ、これだと」
「それならいい。じゃあ気の済むまで飲んでくれ。どのみち君のものだしね、うちのトカイは」
「何かラッキーね。こんな簡単にトカイが飲めるなんて。嘘みたい」
「嘘じゃないよ、本当のことさ」
「後で何かあったりして。上手い話には裏がある、ってね」
「まさか」
「そうよね、あはは」
ヘンリーは話しながらミスティに対して言った。君にはね、と。だがそれは黙っておいた。話すと問題がややこしくなるとわかっていたからであった。
その日はミスティは朝まで飲んでいた。彼女の話によると次の日は休みであるらしい。だから好きなだけ飲めるのだと。それはヘンリーにとってラッキーと言えばラッキーであった。ただし、何故ラッキーなのかは彼にしかわからない。この家にいる者でそれを知っているのは彼だけであった。
朝になるとヘンリーは起きてそのままランニングと身支度を終えて家を出た。出て来る時居間を覗くとミスティがまだ飲んでいた。チーズもハムも殆ど残ってはいなかった。
「行ってらっしゃい」
「うん。まだ飲むつもりかい?」
「いえ、流石にもう駄目よ」
彼女は笑ってそう答えた。
「今日はね。六本空けたし」
「随分と飲んだんだね」
「いつもこれ位飲むわよ。ワインならね」
「強いね」
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