7部分:第七話
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よ」
「そうなんだ」
それを聞きながら違和感を感じていた。何か自分とは違うのだろうか。
「ハンドルもいいし・・・・・・あれ!?」
「どうしたんだい!?」
不意に声をあげたのでハッとして尋ねた。
「いえ、ちょっとね」
ミスティは戸惑いながら答えた。
「急にハンドルの調子がおかしくなったのよ。何故かしら」
「・・・・・・そう」
それを聞いたヘンリーの顔色が急激に悪くなった。酔いも醒めてきた。
「そんなに酷いの?」
「いえ、それ程じゃないけれど」
彼女はハンドルを操りながら答えた。
「何かね、もつれるのよ。乗り心地も急に変になったし」
「そうなんだ」
それを聞いてやはり、と思った。だがそれは口には出さない。
「大丈夫?」
「今のところはね。これ位なら平気よ」
「だったらいいけれど」
そうは言っても安心はできなかった。
「何かあったら大変なことになるからね」
「私の車ってオンボロでね」
運転しながらまた言った。
「こんなのとは比較にならない位運転しづらいのよ。だから平気よ」
「そうなんだ」
「だから安心していて。大船に乗ったつもりでね」
「ああ。ところでもう一つ聞きたいんだけれど」
「何かしら」
「今日はもう店じまいだよね」
「そうね」
ミスティは運転席にあるデジタル時計をチラリと見た後で答えた。
「もうそんな時間ね。けれどどうして?」
「いやね」
ヘンリーは微笑んでから言った。
「うちに泊まったらどうかなって。もう遅いし」
「誘ってるのかしら」
「さてね」
彼は笑みを深めた。まるでアニーに言うように。
「どうかな。君にとっても悪くないと思うけれど」
「前に言ったわよね」
アニーもそれに合わせて笑っていた。
「貴方はタイプじゃないって」
「おや、そうだったかな」
わざととぼけてみせた。しかしその目と心は実はミスティには向けられてはいない。
「それにそんなに酔って私の相手はできるの?言っておくけれど私は積極的よ」
「ふふふ」
ここは笑って誤魔化した。
「無理だと思うけれど。それでも魅力的ではあるわ」
「僕がかい?」
「まさか。トカイがよ」
そう言うミスティの目も顔も笑っていた。それが待ち遠しくてたまらないようであった。
「一つ聞きたいけれど泊まったらそこでトカイも飲んでいいわね」
「勿論だよ」
彼は喜んでそれを認めた。
「好きなだけ飲んでいいよ。何本でも」
「わかったわ。じゃあ泊まらせてもらうわ」
「了解」
「肴は何があるかしら」
「チーズならたんまりと」
彼は答えた。
「モツァレラでもカマンベールでも何でも」
「用意がいいじゃない。いい旦那になれるわよ」
「生憎それだけじゃ今時の女の子は振り向いてくれなくてね
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