6部分:第六話
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だったのか」
所長はそれを聞き終え沈んだ声で頷いた。
「気の毒にな。悪いがそれしか言えない」
「俺もだ。何と言っていいかわからない。済まないな」
「いえ、いいです」
ヘンリーは慰めの言葉に顔を少し上げた。
「もうどうやってもどうしようもありませんから」
「それはそうだがね。しかしおかしいな」
「何がですか?」
「こっちで話そうか」
彼はそう言ってヘンリーを自室に案内した。そして彼を座らせて二人で話をはじめた。
「最近の君のことだがね」
「はい」
所長は応接用のソファーにて彼と正対していた。二人は向かい合っていた。
「どうも身の周りの女性が次々と亡くなっているような気がするんだ」
「まさか」
「いや、本当だ」
彼は否定しようとするヘンリーに対して言った。
「まず君の担当だった未亡人だ。彼女は何者かにはねられたな」
「ええ」
「次にレストランのウェイトレス。彼女も交通事故だった」
「はい」
「そして今君の恋人だ。彼女も交通事故だ。これで三人目だ」
所長は何かを探るような目と声で話をしていた。話しながら考えてもいるようだ。
「君の周りで続けて三人も交通事故で死んだ。それも女性ばかり。これでは奇妙に思わない方がどうかしているのではないかね」
「ですが私は」
彼はキャシー以外に最近付き合った女性はいない。ましてや誰か、女性に恨まれるような真似もしてはいない。ストーカーといっても今回は本当に身に覚えがなかった。
「わかっているよ、君はそんな男ではない」
所長は彼が何を言いたいのかよくわかっていた。
「時々頭のおかしな者がいるのも事実だがね。だがここまでやって誰も犯人を見ていないというのもまた変な話だ」
「そういえば」
この三件の事故はどれも相手が見つかってはいない。犯人はおろかその車さえ見つかってはいないのである。ただはねられ、死んだということしか残ってはいないのだ。
「おそらく君の近辺が関係しているだろう。思い当たるふしは本当にないのだね」
「はい」
彼はきっぱりとそう言い切った。
「全くありません」
「そうだろうな」
これも彼が予想した答えであった。
「少なくとも人間はそうだろうな」
「!?」
それを聞いて妙な感じを覚えた。
「それは」
「いやな、君が最近これといって女性と付き合ってはおらず、また恨みも買ってはいないことはわかるんだ。けれどな、今回はやけに何かを感じずにはいられないんだ。私の推測でなければいいがな」
「はあ」
「最近身の周りで何か変わったことはないかね?」
「私のですか!?」
「そうだ。思い当たるふしはないかね」
「そうですね」
彼は腕を組み考え込んだ。それから言った。
「そういえば今乗っている車ですが」
ふとアニーのことが
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