十五話:血染めの銃弾
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誰もが幸福で争いなどない恒久的な世界平和。
嘘など一言も言っていない。
だが、シグナムとヴィータは切嗣も同じ願いを抱いているのだと疑いもしない。
両者の願いに決定的な違いがあることを知ることすら出来ずに。
「無駄話が過ぎたようだ。シグナム―――奪え」
「し、しかし……」
リンカーコアを奪えという指示に戸惑いを見せるシグナム。
それが目的で戦っていた。しかし、このような結末での勝利など望んでいない。
自身の剣で打ち果たした後に奪うことを目指していた。
こんな事は彼女の本意ではない。
(大丈夫、奪っても殺さない限りは一週間もすれば回復するよ)
(そう…ですが)
(君は何も悪いことはしていないよ。だって全ては―――はやての為だから)
甘く囁くように、毒を流し込むように、シグナムの心を傾けさせる。
彼女の甘さを叱責するわけでもなく、非難するわけでもなく、誘導する。
誰かの為という言葉で自身を正当化する誘惑。
人を地獄の底へと誘う魅惑の言葉。それは悪魔の囁きであった。
「……はい、わかりました」
「フェイトちゃん!」
「ここは通さねえ!」
甘言にそそのかされてフェイトの元に歩みを進めていくシグナム。
なのははそれを止めようと必死にもがくがヴィータが許すはずもない。
先程まですぐ傍に感じられていたが今は果てしなく遠く感じられる距離をゆっくりと詰める。
友を想い上げる叫び声をどこか遠くに聞きながら手を伸ばし魔力の象徴を奪い取る―――
「悪いが、そう上手くはいかせない」
その瞬間に背後に転移してきた黒いバリアジャケットの少年に杖を突きつけられる。
反射的に側方に転がるように飛び込みその範囲から逃れるがリンカーコアの蒐集は絶望的だろう。
フェイトを庇うように立つ少年には二人の少女のような甘さはなく歴戦の魔導士の風格を漂わせているのだから。
「時空管理局、次元航行部隊アースラ所属執務官、クロノ・ハラオウンだ。君達をロストロギア、闇の書の所持及び使用の罪で逮捕する」
「クロノ君!」
【なのはちゃんとフェイトちゃんが時間を稼いでくれたおかげで何とかクロノ君が間に合ったんだよ!】
エイミィの素早い連絡により、現場に駆け付けることに成功したクロノの姿になのはが声を上げる。
逆に切嗣は内心で無駄話をしすぎたかと苦虫を噛み潰したような顔をする。
駐屯所の管制システムをリーゼ達にクラッキングさせてダウンさせることも出来た。
実際、当初はリーゼ達もそのつもりであった。しかし、切嗣がそれを止めた。
リーゼ達のクラッキングは内部から行うもので防壁や警報を素通りしてシステムをダウンさせる。
一見すれば何が悪いのかというとこ
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