第十話・外伝「蒼真と神無……」
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どれほど堪えたことだろうか? もし、この場に神無が居なかったら、とっくにあの女を八つ裂きにしていたところだ。しかし、彼女にそんな光景を見せるわけにもいかず、ましてや神聖な境内を奴の血で汚すわけにもいかない。
しかし、そんな中で神無が割りこみ、とりあえず俺と奴の距離を離した。こうして、俺は今社務所の客室に居る。その間に神無があの女を追い返してくれるそうだ。
*
境内の外、第一鳥居の辺で神無は千冬と対峙するかのように会話している。
「織斑千冬……あのISの筆頭操縦士だな? 噂はかねがね聞いている」
「なら話は早い。早い事蒼真に会わせてくれないか?」
と、邪魔ものを見るかのように、千冬は神無をにらみつける。しかし、神無にそのような脅しは通用しなかった。
「残念だが……其方に今の蒼真を合わすことはできそうにない」
「何故だ? そもそも、貴女は蒼真の何だ?」
「彼を一晩、自宅へ泊めさせた者だ。其方から見れば単なる他人も同然だ。しかし、人の機嫌を見極めることはできる」
「どういうことだ?」
「其方も薄々気付いていたはずだ。今の蒼真殿は異常なほどの怒りを感じた。そして、恐ろしいほどの殺意が……」
「何を言っているか、私には全くわからないな?」
しかし、それをあえて千冬は認めなかった。
「其方……かつて、蒼真殿に何かよからぬ行いを与えたのか?」
「ッ……!?」
まるで、心の奥底を覗かれたかのように千冬はギョッとした。そして、さらにこの神無という巫女をにらみつける。勿論、神無もそんな千冬の様子を見るなり図星であることがわかった。
「言っておくが、私は彼に対して罪を犯したことは一度たりともない!」
少々口を強くさせる千冬であるが、それでも神無は動じることはなかった。
「……とりあえず、今回はお引き取り願おう?」
「……少しでも、蒼真と会わせてもらえないだろうか?」
「其方も先ほどの蒼真殿の異常な気配を感じたであろう? あの激情と殺気はほかならない。これは貴殿の身を案じて言っている意味にもつながる。さ、また後日にでも参られよ?」
「……!」
キリッと、千冬は彼女をにらみつけた後、仕方ないといわんばかりに元来た道を歩いていった。
――ようやく、彼に会えたというのに。あの女は何者なんだ!?
しかし、蒼真を一目見たときに彼からとてつもないオーラが感じたことは嘘ではない。これは、何か訳があるようで、自分の知らないところで蒼真に何かがあったのだ?
「まったく、しつこい御人だ……」
ようやく千冬が消えたことにため息をつく彼女は、社務所へ戻って客室で待たせている蒼真の元へ向かった。
「すまぬ、待たせたな?」
「いや……それよりも、ありがとう」
蒼真は、心より彼女に感謝していた。
「何をだ?」
「俺が、あの女を殺そうとしたから止
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