5部分:第五話
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店だよ、実は」
「そうみたいね。けれど今は一人じゃないじゃない」
「というと?」
「私がいるからよ」
キャシーはそう言って笑った。
「二人だとおかしくはないでしょ、別に」
「まあね」
ヘンリーはそれに笑いながら頷いた。ここで一瞬後ろにあアニーを見た。
「!?」
どういうわけか様子がいつもと違うように思えた。何処か違和感があった。いつもは落ち着いた感じであるのにどういうわけか今は陰気に見えた。銀色のボディの光が鈍く感じられたのだ。
「おかしいな」
「!?何が」
キャシーがそれに気付いて声をかけてきた。
「あ、何でもないよ」
ヘンリーはそれを誤魔化した。そしてキャシーに対して店に入るように促した。こうして彼等は店に入った。陰気な感じのアニーにその背を見せながら。ライトが一瞬光ったように感じられた。
食事を終え店を出る。そしてまたアニーに乗った。
「これからどうするの?」
「そうね」
ヘンリーは車を走らせながらキャシーに尋ねてきた。
「ホテルはとってあるしね。もう帰ろうかしら」
「早いんだね」
「あまり夜に何処かで遊ぶ趣味はないのよ」
彼女はそう答えた。
「ホテルでお酒でも飲もうかしら」
「いいバーを知ってるけど」
「バーはね。遠慮しとくわ」
「そう」
「ホテルでね、飲みたい気分なの」
「じゃあいいよ」
「貴方も一緒にどう?」
キャシーはここでヘンリーを誘いだしてきた。
「一人で飲むより二人で飲む方が楽しいし」
「そうだね」
ここでまた異変が起こった。ハンドル、そしてブレーキの効きが今までよりさらに悪化したのだ。
「!?」
「?また何かあったの?」
「あ、何でもないよ」
彼は咄嗟に誤魔化した。誤魔化すのはこれで何度目だろうと思った。少なくとも今日はじめてあった女性に対して何度も誤魔化すのははじめてであった。
「今車を運転しているしね。止めておくよ」
「そうなの」
「明日も仕事だし。残念だけれどね」
「わかったわ。それじゃ」
「うん」
丁度ホテルに着いた。彼女はヘンリーに別れを告げるとホテルに入って行った。そして彼はそれを見届けると自宅へ帰った。アニーのハンドルやブレーキは先程よりは幾分ましになったとはいえまだ重かった。それが彼にとっては首を傾げざるを得ないことであった。
これが縁となった。ヘンリーとキャシーは離れてはいるが度々会うようになった。傍目から見れば付き合っていると言われる関係になるまでそう長い時間はかからなかった。キャシーは何時しかヘンリーの家にも出入りするようになっていた。
その間アニーの調子はずっと悪いままであった。それどころか今まで以上に酷い状況となっていた。たまりかねたヘンリーは一度彼女を修理業者に見せてみた。だがその返事は彼が予
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