5部分:第五話
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は強気だった。
「ヤンキースが強いのはこれからなのよ」
「生憎レッドソックスは土壇場に強くてね」
ヘンリーの方が余裕があった。
「こういう状況になったらそうそう負けたことはないんだよ」
「けれど今日は違うわ」
キャシーはまだ諦めない。
「このシーズンがかかっているからね、今日は」
「それはうちもだよ」
それを聞いたヘンリーの顔も変わった。
「まあ見てていたらわかるよ。うちの正念場での強さがね」
「期待しているわ」
キャシーは憮然としながらそう答えた。
「ヤンキースのそれをね」
「ふん」
そうこう話している間にもゲームは進んでいた。レッドソックスのバッターのバットが一閃した。
「やったか!?」
白いボールが一直線に進む。そしてそのままスタンドに入った。バックネットの席から打った瞬間からボールがスタンドに入るその時まではっきりと見えていた。勝利の流れをそのまま目に焼きつかせることができた。
「よし!」
ヘンリーはそれを見て会心の笑みを浮かべた。それに対してキャシーはその顔を不機嫌なものにさせた。
「やられたわね」
「今シーズンはこれでうちの優勝だな」
ヘンリーの目の前ではサヨナラホームランを放ったそのバッターが今ホームベースを踏んだ。歓喜の声でナインに囲まれていた。それが何よりの証拠であった。
試合は言うまでもなくレッドソックスの勝利であった。まるで優勝したような騒ぎであった。ヘンリーは勝利の余韻を味わいながらゆっくりと席を立ってキャシーに対して言った。
「じゃあ行こうか」
「ええ、わかってるわ」
キャシーは憮然としてそれに頷いた。
「何がいいの?食べるのは」
「シーフードがいいな」
彼はそう答えた。
「行こう。新鮮なロブスターを出してくれる店を知ってるんだ」
「ロブスターね。わかったわ、それで行きましょう」
「うん、頼むよ」
「全く。ヤンキースもだらしないわね。もうちょっと頑張りを見せなさいよ」
悪態をつくキャシーを伴って球場を後にした。そして彼等は駐車場に向かった。夕方にはじまったゲームであるが終わる頃にはもう真っ暗になっていた。彼等は照明に照らされた駐車場の中を進む。
「ニューヨークじゃ夜こんなふうには歩けないらしいね」
ニューヨークの治安の悪さは有名である。彼はそれについて言及してきたのだ。
「最近はそうでもないわよ」
だが彼女はそれを否定した。負けたというのに軽やかな足取りであった。
「市長が変わってからね。治安がよくなったわよ」
「そうだったんだ」
「まず地下鉄が綺麗になったわね。あのサウス=ブロンクスも変わったし」
「サウス=ブロンクスのことは聞いたことがあるな」
ヘンリーは顎に手をあててそう述べた。
「ビル=クリントンも事務所を構
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