3部分:第三話
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第三話
木曜日ヘンリーはそのレストランにやって来た。そしていつもの席に座りいつものウェイトレスを呼んだ。今日はデートにでも誘ってみようと思っていた。
(少し歳が離れているけれどいいな)
自分で自分にそう言い聞かせていた。相手が高校生位ならまあ許される。年の差カップルなんて幾らでもいる。それに自分は年齢よりも若く見られる、大丈夫だ、そう自分に言い聞かせながら念入りに髪も服も調えてレストランにやって来た。懐に映画のチケットを二枚忍ばせて。今話題の恋愛映画だ。
(これならいいな)
(ロザンナだったかな)
覚えたての名だ。その名前を思い出すだけで楽しい気持ちになる。まるで高校生に戻ったような気持ちであった。
車から出てレストランの扉を見る。少し古風な造りの扉が今日は重苦しいように感じられた。彼はそれをくぐって勇気を出すことにした。だが一つ気懸りがあった。
近頃またアニーの調子がおかしいのだ。またハンドルやブレーキが重く、乗り心地が悪い。それが気にはなっていた。今朝になってそれが急になおっていたが。それも不自然であった。
(どういうことなのだろうな)
アニーを見てチラリとそう思った。だがそれよりも今はこれからのことの方が重要であった。彼は意を決して店の中に入って行った。だがそこで待っていたのは思いも寄らぬ答えであった。
「えっ・・・・・・」
彼はそれを聞いて絶句した。
「それは本当のことですか!?」
「はい」
彼女の同僚のウェイトレスがそれに答えた。彼女も知った顔である。
「昨日の夜急に病院から連絡がありまして。それで」
「そうですか」
答えはできてもまだ呆然としていた。
「まさかそんな」
「私達も信じられません」
同僚も落ち着いてはいなかった。
「おとついまであんなに元気だったのに」
「それが急に・・・・・・」
別の同僚の目は赤くなっていた。どうやら彼女とはとりわけ仲がよかったらしい。
「はあ」
彼もまた呆然としていた。もう食事どころではなかった。力なく店を去り事務所へ戻った。彼の心は重かったがアニーの運転は軽やかになっていた。不自然な程に。それはまるで心を持っているようであった。
それから数日の間流石に落ち込んだ。仕事も手につかない。見るに見かねた所長が彼に声をかけてきた。
「気持ちはわかるがな」
「すいません」
「謝らなくていいさ。それより君の有給休暇のことだが」
「はい」
「かなりたまっているだろう。ここで何日かとってみたらどうだ」
「休めということですか」
「そうだ。今のままではどのみちよくない。旅行にでも行って気分転換してきたらいい」
「わかりました」
こうして所長の勧めで彼は有給休暇をとることにした。事務所を出るとまず本屋に向かい地図を買った。それ
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