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アニー
3部分:第三話
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「日本風の焼肉かい?」
「わかりますか」
 それを受けてガスに火を点けていた三十代前半程のアジア系の女が顔を上げた。顔立ちは韓国系というよりは日系のそれに見えた。
「実はうちは日本の焼肉屋のチェーン店なんですよ」
「そうなのかい」
 これは意外な返事であった。では看板のハングルは何だろうと思った。彼はそれについて尋ねることにした。
「看板のあれは」
「宣伝です」
 彼女はそう答えた。
「ハングルで書いた方が本場らしく見えますよね。それです」
「そうだったのか」
「うちはそうしてるんです。味は少し違うと思いますが」
「そうみたいだね」
 焼けた肉を一口食べながらそれに応えた。フォークで食べている。
「韓国の焼肉とはまた違う味になっているよ」
「これも日本風だと思います」
「何かまろやかな味だね。気にいったよ」
「有り難うございます」
 こうして店の者と楽しく話をしながら焼肉を食べた。まさかこんなところで日本風の焼肉を食べるとは思わなかったがその意外な出来事にかえって気分をよくした。店を気分よく出てワシントンの検索を再開した。
「食べてみれば何もすることがないな」
 これはまた意外なことだった。政府の関連施設を見る気にもなれない。そうなればここですることは極めて限られてくるのが実情であった。
「どうしようかな、ここには球団もないし」
 野球があればそれを観ることも可能だがここには球団自体がない。かってはセネタースという球団があったが移ってしまった。何でもエクスポズがこちらにやって来るという話があるが実現するかどうかはわからないのだ。ちなみに彼は幼い頃から地元の球団であるレッドソックスのファンである。この球団のファンは熱狂的な者が多いが実は彼もその一人である。優勝した時は朝まで飲みあかしたものであった。ちなみに一番嫌いな球団はヤンキースでありそこのオーナーは彼にとってはこの世で最も嫌いな者の一人である。常々ヤンキースやこの名物オーナーの悪口を言っている。野球となれば人が変わるのである。
「少し早いけれど飲むかな」
 ふとそう思った。まずは横にあった店で新聞を買う。レッドソックスはヤンキースに勝っていた。それを見てさらに気分をよくさせた。
 酒場を探すと丁度いい店があった。そこをチェックした後で時間を潰すことにした。適当な場所を歩き回ったり、カフェに入ったりして時間を潰した。
 そして店が開く時間になるとそこに入った。その日はそこで飲んだ後でホテルに帰った。それでこの日は終わりであった。
 一日でワシントンに見切りをつけた。彼はこの街を後にした。そしてボストンに帰った。途中一泊して帰った。いい気分転換にはなった。アニーの動きも非常によかった。


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