2部分:第二話
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「何かあったんですか?」
所長が所長室からオフィスに来るなりヘンリーに声をかけてきた。彼はそれを受けて顔を向けさせた。
「君の担当の未亡人のマーガレットさんだがな」
「はい」
「昨夜亡くなられた。事故でだ」
「事故!?」
「そうだ。家の前でな。車に刎ねられて死んだらしい」
「昨夜ですか」
彼はそれを聞いて暗い顔になった。
「昨日まであんなに元気だったのに」
「まあ仕方ないことだ」
暗い顔になったヘンリーにそう言って慰めをかけた。
「せめて葬儀には行ってやれ、な」
「わかりました」
「他のことは我々でしておくからな。君は彼女のことからは離れた方がいい。わかるな」
「はい」
「ではな。他の仕事に回ってくれ」
こうしてその未亡人のことは仕事に関しては終わった。遺産は結局息子のものとなり白い品のいい邸宅もその息子のものとなった。ヘンリーはそれを聞いていたたまれない気持ちであった。
「車、か」
引っ掛かるものがあるのは事実だ。彼は息子を疑っていた。しかし彼は今はシカゴに住んでいる。それに遺産を巡って争っているとはいえ実の親子である。揉めてはいても会えば一緒に食事をしたりしていた。彼も同席したことがあるが仲は悪くはなかった。思ったよりも醜い対立もなくすんなりいく仕事だと内心喜んでいたのである。だがこうなってしまった。息子が犯人でないとしても疑いたくもあった。
それから暫く彼は普段通り仕事を続けた。ある日行きつけのレストランで昼食をとることにした。その店のステーキがお気に入りなのである。
アニーを駐車場に入れ店の中に入った。そして席に座りウェイターを呼んだ。やがて若い女性のウェイトレスがやって来た。
「御注文は何にしますか」
「そうだね」
彼はメニューを読みながら考えていた。そして答えた。
「サーロインステーキにしようか。いや、待ってくれ」
「どうかしたんですか?」
「今日は止めておこう。チキンステーキがいい」
「チキンステーキですね」
「うん。サラダのドレッシングはオニオンで。いいかな」
「わかりました。それでは」
「うん」
チップを渡して彼女にオーダーに行かせた。その後ろ姿をゆっくりと眺める。ポニーテールに制服のミニスカートから出ているスラリとした脚が印象的だ。まだ十代らしくその健康さと若さが彼の目に止まった。三十を過ぎた彼にとってはもう眩しくなりだすものであった。
「若さか」
彼はふとそれについて考えた。
「何か急に懐かしくなってくるな」
最近何かと色々なものが気になりだしてきた。腹や髪の毛のことが。だがあの頃はそんな悩みなぞなかった。それを思うだけでまた懐かしさがこみあげてくるのだ。
学生時代はバスケットボールをやっていた。マイケル=ジョーダンのファンだった。彼のバス
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