File.1 「山桜想う頃に…」
] 4.21.AM6:25
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はいたか?」
「ええ…知ってたんですか?」
結城が不思議そうに言うと、黙っていた松山警部と佐野さんがギョッとした表情で私を見た。私が話した夢が、真実味を帯びてきたからだ。
「その謙之助…どう生きたんだ?」
「あまり資料は残されてないんですよ。三十四で没してるんですが、一応は妻と幸せに暮らしていたようです。さして名を残すようなことは行ってませんね。」
「死因は?」
「えぇと…あった。華千院照明という人物と共に狩に出掛け、そこで事故死したそうです。華千院の放った矢が誤ってあたり、数日後に亡くなったとありますね。一応は医師の記録が残ってますから、間違いないと思います。」
華千院…確か京都にそんな名の人物がいたな…。名を残すことがなかったにしろ、謙之助自身は幅広い交友関係を持っていたのだろう。
だが…本当に事故だったのか?私は、あの堀川家の兄弟を思い返し、些か勘繰らずにはいられなかった。しかし、これは結城の言葉によって否定された。「謙之助が亡くなった際、照明は詫び状と多額の金品を送り、自分の矢が友人を殺めたと生涯悔やみ続けたそうで。これ以降も畑名家とは友好的な関係を続けてるので、さしあたって事件性はないようです。」
結城がそこまで話し終えると、再び病室のドアが開いて亜希が入ってきた。だがその後に、一人の女性が一緒に入ってきた。その女性を見て、皆は目を丸くした。
「相模君、お久しぶり。あら、結城君までいたの?こちらは…警察関係者って方々?」
「アンナさん!いつこちらへ戻ってらしたんですか!?」
入ってきたのは藤崎の母、アンナ・アマーリエ・藤崎だった。いつも所在不明の詩人にして版画家。連絡を取ろうにも、いつどこにいるか誰にも分からないのだ…。そんな彼女がここにいるのは、なんとも不思議としか言えなかった。
「あなた方が寝てる間によ。全く…また変な事件に首突っ込んだのねぇ?京ちゃんもホント、懲りないんだから。」
アンナさんは未だブツブツと言っている。何て言うか、アンナさんはドイツ人なのだ。その彼女が流暢な日本語で小言を並べてるのは、とても奇怪に思えてしかたない…。
アンナさんは八ヵ国語をマスターしている。そのお陰で世界を飛び回ることが出来るのだ。いわば天才と言うやつだ。藤崎の父親も天才と呼ばれる指揮者で、その二人の血を引く京之介には無論、天才と呼ばれてもなんら不思議ではない程の知識と行動力があった。
「で、相模君?私の話、ちゃんと聞いてますか?」
「は、はい。大丈夫です。ちゃんと聞いてますよ。」
「それで、元凶は分かったのかしら?」
正直…全く聞いてなかった…。まぁ、この事件に関して話してたのだろうが…。
「分かりましたよ。今回は幾つかの思考が混ざっているようですから、私は兼造、ハル、イトの三人が何らかの形で関係してる
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