暁 〜小説投稿サイト〜
相模英二幻想事件簿
File.1 「山桜想う頃に…」
] 4.21.AM6:25
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


「…ここは…?」
 目を開くと、初めに真っ白な天井が見えた。随分と長く眠っていたような気がする。
「あなた…あなた!?ちょっと結城君、先生呼んできて!目を覚ましたわ!」
 何だ…亜希も結城もいたのか。あれ?藤崎はどこいったんだ?
「あなた。ここ、どこだか分かる?」
「…ん?」
 何を言ってるのかと暫く考えていたが、頭の奥でうっすらと記憶が蘇り始めた。
「そうか…ここは、病院か。変だと思ったわけだ。」
「何を暢気なこと言ってるの!私なんて、血だらけのあなたを見て心臓止まりかけたわよ!」
「ああ…済まなかったな…。」
 今にも泣きそうな亜希に、私は苦笑混じりにそう言った。亜希はまだ何か言いたげだったが、そこへ病室の扉が開き、白衣を着た中年の男が現れた。この人が私の担当医なのだろう。
「相模さん。あなた、自分がどうなったか覚えていますか?」
「はぁ…うっすらとですが…。どうやら地面が陥没したようですね…。」
「そうです。あなた、30m近くも下に落下したんです。連れの方もそうですが、あの状況で良く生きてたと思いますよ。暫くは入院してもらいますからね?」
「はい…宜しくお願いします。」
 先生は脈をみたりしていたが、私はその最中に再び深い眠りに落ちたのだった。
 次に目を開いたとき、傍には松山警部と佐野さんの姿もあった。この時は気分も良く、体のあちこちは痛むものの、頭の中はすっきりしていた。
「警部も佐野さんも…来て下さってたんですね。」
「ああ。君達には悪いことをしたな…。」
「なぜ謝るんですか?」
「いや…私が君達をもう少し信用していれば、二人だけで行かせることはなかった。」
 松山警部はそう言って頭を下げ、「済まなかった。」と呟くように言った。あの松山警部が…心から謝罪しているのが分かる。まぁ、亜希にも結城にも、これでもかというほど文句を言われたことは想像出来るからなぁ…。
「警部…これは私と藤崎で決めたことです。この怪我だって自分のミスが招いたことですし、誰も悪くないんですよ。」
 私はそこまで言うと、ふと夢で見た女を思い出した。あまりにリアルで、あれが夢なのか何なのか分からない。だが…あれはきっと、語られたかった過去からのメッセージだったのではないか?私はそう考えた。
「松山警部…眠っている間に、夢を見続けたんですよ…。」
「…夢…?」
「ええ。飽くまでも夢でしかありませんが、そこには謙継と兼造の兄弟や、その父から妾、使用人までが登場しました。僕達の知らなかった人物まで…。」
 そう言うと、松山警部はどうしたものかと言った風な表情を見せたが、後ろで控えていた佐野さんが「話してみて下さいよ。」と言ってくれた。松山警部は苦笑いしているが、私は少しずつ話すことにした。
 暫くは二人とも静かに聞いていた
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ