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相模英二幻想事件簿
File.1 「山桜想う頃に…」
\ 不明
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そう不思議に思った時、再び視界が揺れた。
 視界が正常になった時、そこには別の風景が広がっていた。
 そこは見覚えのある場所であり、頭上にある美しい欄間は忘れようにも忘れられないものだった。だが全てが同じわけではなく、そこは整えられた大広間になっていた。
 そこへ二人の男が見えたが、廊下の隅に女の影も見てとれた。この女、どうやら中の会話を盗み聞きしているようだ。
「して、兄上。イトのことは如何されるつもりか。妾として傍に置くとは、あまり世間体のよいものではありますまい。」
「兼造…お前、妾のことを問い質しに来たのではないのだろ?」
 イト…兼造…?では、兄上と呼ばれた男は長男の謙継か…。だがこの二人、こんなに睨み合うような仲だったか…?
 私は訝しく思いながらも見ていると、二人は黙り込んだまま微動だにしない。暫くし、やっと兼造から沈黙を破って口を開けた。
「兄上…いや、当主殿。この春、山桜の咲く頃に、櫻華山へ死者の弔いに赴いて頂きたい。昨年は赴くことなく終えてしまいましたので。」
 その言葉に初め、意図を読めずに謙継は黙したままだった。暫くすると何かを察してか溜め息を洩らし、目の前に座る弟へと返答した。
「…分かった。では、四月十日にするとしよう。それで良いな。」
「はい…。」
 兼造の返事を合図に、再び視界がぼやけた。私は溜め息を吐くしかなかった。こうもあれこれと見せられても、それがどう繋がっているかがいまいち把握出来ない。だが、それを答えてくれる者は勿論、いるはずもないのだ…。
 霞がかった視界が晴れると、そこには目映いばかりの山桜が咲き誇っていた。そんな山桜の中、二人が歩いて来る姿が見えた。堀川家の兄弟、謙継と兼造の二人だ。手には桶と風呂敷がある。風呂敷には恐らく、蝋燭と線香などが入っているのだろう。
 二人は黙々と先へ進み、とある場所へと辿り着いた。そこには大小様々な墓が並んでいたが、その中央に風穴の様なポッカリとした穴が開いていた。前に見せられた染野がハルを葬った場所と同じようだが、随分と印象が違う気がした。穴の隣には小さな社もあるため、同じだとは分かるが、こんなに墓石が並んでいたとは…。
 そこは意外と急斜面になっており、端には頑丈な柵が作られていた。以前に落ちた者がいたようだ。だが、私の目には不可思議なものが見えていた。柵に付いた真新しい傷だ。あの二人には見えない様な足下に、深く切られた様な傷…。故意に付けられたものに違いない。これを見せられているとしたら…何かがあることを物語っているのだ…。
「これで満足か…。」
「はい。」
 どうやら済んだらしい。二人は社の前に立ったまま話を始めた。
「だが…お前が何故これを言い出したのだ?これは先代の父上が、個人的に始めたことではないか。」
「いいえ。これは堀川家当
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