File.1 「山桜想う頃に…」
[ 同日 PM1:24
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そんな藤崎を待たせ、私は再び松山警部と話始めた。
「いやぁ…はっきりしたことは言えないが、どうやら板前の染野と、役所に勤めてる米屋がそうらしい。」
私が再び携帯へと神経を集中したせいか、藤崎は先へと進んでいた。ふと見ると、その先で藤崎が早く来いと合図していたため、それを松山警部へと言って、私は藤崎の所へと急いだ。その際、携帯はスピーカーにして、そのまま話を続けられるようにしたのだった。
「二人とも…くれぐれも気を付けてくれよ…。」
携帯から松山警部の声が響いた。この件でそうとう参ったらしく、今の松山警部には最初に感じた威圧感は無くなっていた。
ま、無理もないよな…。こう立て続けに死人が出た上に、そのどれもが謎だらけなんだからな。解決させたとしても、まさか霊の仕業とは報告書には書けないだろうし。
「京、何かあったのか?」
私が藤崎へと問い掛けると、携帯から松山警部も藤崎へと問い掛けた。
「なんだ、スピーカーにしてるのか。だったら最初からしとけよ…。」
私は苦笑いしたが、それも次の瞬間には消え失せていた。
今、私達の目の前には墓がある。だが、そこへ辿り着くための細い道を断ち切るように、そこには大きな穴がポッカリと開いていたのだ。その先に例の墓があるわけだが、その場所も奇妙だった。まるで崖を削って墓を作ったようにさえ思える…そんな不自然極まりない場所にあるのだ。
「何でこんな小さな山に…崖が?」
私が唖然としていると、再び携帯から声が聞こえたが、今度は松山警部ではなく佐野さんだった。
「お二人とも、そこ気を付けて下さいね!一昨年の秋口に、台風で土砂崩れしてますから!」
それを聞き、私と藤崎は顔を引き攣らせた。そういう情報は、もっと早く知らせてほしいものだ…。
「その時、一気に陥没したんで、一部の墓と社が地下へ落ちたんですよ。一度は墓石や遺骨を引き上げようとしたんてすけど、周囲の地盤もゆるかったんで断念したそうですよ。」
佐野さんがそう説明を付け足した。
確かに…底がはっきりとは見えないほど深い…。落ちたらまず、生還できはしないだろうな…。
「佐野さん。さっき言った社って、例の長男を祀ったっていうものですか?」
私は不思議に思って聞いた。確かに、社についてはそう聞いてはいたが、何か引っ掛かるものがあったのだ。
「いや、正確には違います。何人かを一緒に祀ってあったそうですから。しかし結局、残った墓が嫁の墓なんてねぇ。」
「嫁の墓?」
今度は藤崎が怪訝そうに聞いた。
「ええ。大きな墓石が見えると思いますが、あれは謙継の妻の墓なんですよ。」
その佐野さんの答えに、私と藤崎は嫌な考えに囚われた。まさか、宗彌の娘である謙継の妻の墓がこんなところにあるなんて…私達は考えていなかったのだ。
この町には、
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