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相模英二幻想事件簿
File.1 「山桜想う頃に…」
Z 同日 PM9:55
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、私達は困惑した。分家はあって不思議じゃないが、ここにある資料や今までの話にも一切出てこなかったからだ。
 まぁ…古い資料だから、抹消や紛失と言うことも有り得るだろう。だが…伝承や亡くなった女将の話にすら出てこなかったのは府に落ちない。ここで言えることは、問題が増えたと言うことだ…。
「その畑名家は、現在どちらへ?」
 私が疑問を口にする前に、結城が先に米屋さんへと質問した。米屋さんは些か困った表情を浮かべながら返した。
「いえ…この分家は、昭和半ばで絶えてしまってるんですよ。屋敷が火災にあって、その時、一家八人全てが焼け死んでるんですよ。」
「その資料…ここにない様ですが…?」
 私がそれを聞くと、今度は腕組みまでして溜め息を吐いてしまった。聞いてはいけなかったか…?
「畑名家の資料はですねぇ…一部を除いて、三十年近く前に全て処分する決定を受けまして…。最期の当主だった畑名吉弘氏が国会議員だったので、どうも彼に関わった人物からの指示みたいでしたねぇ。チラッと見ただけですが、どうも税金を横領していたみたいでしてねぇ…いや、今のは聞かなかったことにしてくださいよ?」
 米屋さんはそう言って、頭を掻きながら笑った。だがそうなると…分家は断絶ってことか。
 一体どうなってるんだ?堀川家ってのは、単に栄吉の長男の死から何かが始まってるんじゃないのか?この分家の火災にしたって…八人全員が死ぬなんてのは有り得ることなんだろうか?この悲劇にさえ理由があるとするなら…。
「なぁ英二。これ、関係あるんじゃないか?」
 藤崎が何か見付けたようで、私に古びた文書を持ってきて見せた。それは和紙に筆で書かれたもので、この資料の山と全く印象が異なるものだった。何故こんなものが混ざっているかは不明だが、それに目を通すと、そこには「山内」と「堀川」の文字が見てとれた。他に栄吉や謙継、櫻華山を命名した堀川宗彌の名前も見付けることが出来、関係資料であることが分かった。
 その文書をよく読み進んでゆくと、見知らぬ名前も記されていたのだ。それは伝承にも他の資料にも無かった長男謙継の妻、ハツ。そしてもう一人、イトと書かれた名があったが、こちらはこともあろうに「謙継の妾」と記されていたのだ。
「京…これって…。」
「そうだな。恐らく、これは何かの報告書だろう。文体からするに、ハツが夫である謙継を誰かに素行調査させてた…そう考えられるな。」
 確かに…そう読み取れる内容だが…。もしそうであれば、これは驚くなんてもんじゃない。男尊女卑の時代にあって、妻が夫を調査させるなんて…。このハツという女性、一体何者なんだ?まぁ…それだけ夫を愛していたとも受け取れるが…。だが、これを調査した人物は誰なんだ?
「はぁん…なるほどねぇ。」
 私は最後まで読みきると、これを書いた人物らしき
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