File.1 「山桜想う頃に…」
Y 4.11.PM7:48
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
聞こうじゃないか。」
松山警部は膝に手をやり、藤崎へと視線を向けた。周囲にいる亜希も結城も、藤崎が何を話し出すのか見守っている。
「一昨日のことです。俺達は女将の勧めもあって、桜庭さんに櫻華山へと案内してもらってました。そこで桜庭さんに、旅館にまつわる昔話を聞かせてもらったんです。恐らく、この辺りの住人なら知っているであろう話しですよ。」
藤崎がそこまで言うと、いつの間にか姿を見せた佐野さんが口を挟んだ。
「堀川家が地主だった頃の話しですよね?確か…兄弟の不和が原因で兄が殺されたって話しを聞いたことあります。」
「佐野…お前、いつからそこ居たんだ?」
「はい?さっきから居ましたけど…。」
影が薄いんだか何なんだか…。まぁ、それはこの際どうでもいい。藤崎は佐野さんに「そうです。」と言って会話を切り、再び話を先へと進めた。
「今、佐野さんが言った兄弟の不和の話…この事件で、これが重要な鍵になっていると考えられるんです。その日、俺達は夜になってから旅館へ戻りましたが、戻って早々に女将が倒れたことを耳にしました。まぁ、医者も来てると言うので、俺達はすぐに部屋とへ戻りましたが。それから温泉へ向かい、俺達は暫く気分良く浸かっていました。」
「女将が倒れたってのに、温泉に入ってたのか?」
途中、松山警部は怪訝な顔をして藤崎に言った。
「松山警部。俺達は見舞いに来たんじゃありません。旅館の人間を気遣って、女将が喜ぶと思いますか?」
「いや…まぁ…そりゃそうだが…。」
藤崎は言葉に窮した松山警部を無視し、話を元に戻して喋り始めた。
「その温泉で、俺達はとある男性と会いました。他に客は居なかったですが、気付いた時にはもう入ってきてたんです。ま、結構宿泊客もいたので、その誰かだろうと考えてたんですが…何か違うんです。」
「何か…違う?」
今度は結城が口を挟んだため、亜希が「ちょっと黙ってて!」と言って結城を窘めた。今でも単に大学の後輩としか亜希は思ってないんだが、一応結城は弁護士先生なんだが…仕方無いか。
藤崎は二人を見て苦笑しつつも、あの話を続けた。
「そうだ…違ったんだ。その男性と話をしていると、不思議と会話が噛み合わない。何とはなしに生まれを聞くと、文久三年だと言ったんですよ。」
「はぁ!?」
松山警部は眉間に深い皺を彫りながら、藤崎へと詰め寄った。
「有り得ねぇだろ?文久ったら、1800年代半ばだぞ。」
「警部って案外博識なんですねぇ。」
「お前…俺を揶揄ってんのか?」
「いいえ。こうなると分かってたから、昨日は何も言わなかっただけですが?」
そう言って藤崎が松山警部を見ると、警部は「分かった…話を続けろ…。」と言って座り直したのだった。
藤崎は窓から射す陽射しに目を細めながら外を見た後、こちらに振り
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ