1部分:第一話
[2/3]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
れに乗って家に帰るつもりであったのだ。
「それで宜しいですね」
「ああ」
彼は笑顔で頷いた。
「試し乗りの意味も含めてね。それじゃ」
「はい」
車に乗った。そしてアクセルを踏み発進した。反動が自分にかかってくる。
「いいねえ」
彼はそれを味わいながら笑った。その反動もいい感触だった。加速の際のそれを味わうのが心地良かった。
加速も速くスピードもよく出た。それが彼をさらに喜ばせた。
「アメリカの車はこうでなくてはな」
運転しながらそう思った。彼が日本車をあまり好まないのはそれもあった。性能がいいのは事実だが馬力がもう一つなのだ。アメリカの車は馬力がなくてはいけない、そう考えている彼にとって日本の車はそうした意味でも不満であったのだ。だがこの車は違っていた。そのままのアメリカの車であった。
瞬く間に家に着いた。彼が思っていたよりもずっと早く家に着いてしまった。
「もう着いたのか」
彼は車の中にあるデジタル時計を見てそう呟いた。予想していたよりもかなり速い。
「御前はどうやらかなり元気のいい娘みたいだな。ヤンキーガールそのものだよ」
笑いながら車にそう話し掛けた。
「よし、御前の名前が決まったぞ」
笑いながら言う。
「アニーだ。ありきたりの名前だがいいだろう」
この前観たミュージカルのヒロインの名前をとったのであった。
「それじゃあな、アニー。明日から頼むぞ」
そう言ってこの日はそのままガレージから去って休んだ。その時彼は見ていなかった。車がどういうわけか微かに揺れ動いたことに。まるで喜んでいるように。
次の日かたヘンリーはアニーに乗って通勤を開始した。通勤は実に快適であり、それが朝から彼を気分よくさせた。
「いいねえ、アニーは上手く動いてくれる」
彼はハンドルを捌きながらそう呟いた。
「朝から気持ちがいいな。こりゃいい仕事ができるかもな」
そう言いながら事務所に向かった。彼の勤める弁護士事務所は何人かの弁護士を中心としている。彼はその中の一人であるのだ。
「お早う、ヘンリー」
事務所に着くと一人の品のいい白人の紳士が声をかけてきた。白い髪を後ろに撫で付けている。四十代後半と思われる顔立ちである。だが歳よりも品性を漂わせた顔をしていた。スーツも高価そうなものを着ている。身体からはオーデコロンの甘い香りが漂っていた。
「お早うございます、所長」
彼はその紳士に対して挨拶をした。
「元気そうだね、今日も」
「ええ」
ヘンリーはまた朗らかな笑みをもって言葉を返した。
「実は車を買い換えましてね」
「ほう、そうなのか」
彼はそれを聞いて笑みを作った。やはり品のいい笑みであった。悪い印象は受けない。
「どんな車だね」
「シルバーの可愛いやつでね。後で御覧になりま
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ