File.1 「山桜想う頃に…」
X 同日 PM2:21
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だろうことは想像に難くない…。
「で…本当は何があったんですか?」
佐野さんはどうにか気を持ち直して再度聞いてきたが、こんな調子では埒が明かない。すると、寝転がっていた藤崎がひょいと起き上がって言った。
「明日になれば分かると思いますよ?」
「…?」
その答えに、佐野さんは首を傾げて「どうしてです?」と聞き返したが、藤崎は再び寝転がっり、それ以上言葉を返すことはなかったのだった。
小さな窓から入る光は紅みがかり、夕暮れの刻を知らせていた。
私と佐野さんは、何も無いと言った風にごろんと横になっている藤崎を見詰めていたが、彼が最後に言った言葉が胸の奥に引っ掛かっていた。
それはとても妙な感覚で、まるでこれから嫌なことが起こる様な…そんな予感にも似たものだった。
「ねぇ…相模さん。また何か起こるなんて…無いですよねぇ…。」
不安げに佐野さんが聞いてきたが、私には何とも答えようがなかった。探偵なんてやっていると、こういう勘だけは鋭くなるのだ。
- 必ず…何か起こる…。 -
それは確信に近いもので、何も起こらないとはとても答えられなかった。
だが、目の前ですがるような目をしている佐野さんを見て、私は仕方無く口を開いた。
「きっと…大丈夫ですよ…。」
呟くようにそう言うと、私は紅い光の射し込む小さな窓へと目をやった。
私の言葉はまるで祈りのようであり、それきり佐野さんから言葉が返ってくることはなかったのだった。
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