File.1 「山桜想う頃に…」
X 同日 PM2:21
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入った。勿論、藤崎も一緒にご宿泊だ。
しかし…今から思えば、無理にでも出ていれば良かったと思う…。
さて、留置所に入れられたはいいが、別に何をすることもないため、私達はぼけっと時間が過ぎるのを待っていた。
そんな中、ある人物がこそこそしながら私達の所へとやって来た。
「お二人共、本当に申し訳ない。」
「佐野さん、何であなたが謝るんですか?」
私達は訝しく思って佐野さんを見た。松山警部が謝罪に来るのだったら話は分かるが、佐野さんは単なる一警官に過ぎない。わざわざ上司である松山警部の目を盗んでまで、こんなとこへ謝りに来る必要は無いと思うんだが…。
「あの…松山警部なんですが、実は別件でこちらへいらしてるだけなんです。それと重なるように今回の事件が起きてしまい、これが解決しないと戻れないんですよ…。」
私は呆気に取られたが、隣で藤崎は苦笑いしている…。こいつ、いつから気付いてたんだ?やはり、藤崎の方が探偵の素質があるんじゃないか?
「すると…どうしても犯人を挙げないと、降格させられると?」
「まぁ…そうなるかも知れないと、本人は考えているようですが…。」
「なるほどねぇ…。」
これで何となく見えた気がした。松山警部は、かなり焦っている御様子だ。しかし…なんて間の悪い人だろう。こんな事件、滅多にあるもんじゃないってのに巻き込まれるなんてな…。
「それで…本当になにかあるんですか?」
「何がですか?」
佐野さんが目を輝かせながら聞いてきたが、私達は何を聞いてるのか分からずに首を傾げた。すると、佐野さんは「桜のことですよ!」と言ってきたので、私達は溜め息を洩らしたのだった。それを受け、黙ったままだった藤崎が口を開いた。
「あるにはあるが…言ったとこで信じてはもらえないし、何の証拠にもならないよ。」
藤崎にそう言われた佐野さんは、「どうしてですか?」と聞いてきたので、藤崎は仕方無さそうに答えた。
「君、霊って信じるかい?」
「は?霊…ですかぁ?」
佐野さんは露骨に怪訝な顔をした。藤崎はそれを見て、これで話は終わりとばかりに言った。
「だから言わなかったんだよ…俺はな。」
「と言うと…まさか、幽霊が人を殺した…なんて言いませんよねぇ…。」
佐野さんが予想に違わぬ反応を示したため、藤崎は溜め息を吐いて寝転がったのだった。私は苦笑いするしかなかったが、信じない人間に話したとこで、こうして不審がられるだけだと分かっていた。
まぁ…警察からすれば、こんな話はでっち上げた空想の産物くらいにしか聞こえない。いや…大概の人間はそうだろう。見えず、聞こえず、感じることも出来なければ、人間はそれを現実とは認めない生き物だ。善だろうと悪だろうと、それは同じだと言える。それを松山警部なんかに聞かせたら、顔を真っ赤にして怒る
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