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だが大規模戦闘でもなければ、やはり傭兵だって命は惜しいから自分の命を大切にはするものだ。
その中でも、自分の命を優先してなるべく距離を置いたりして小金を稼ぐような安全重視タイプの傭兵もいるのだ。
まぁ、命令指示書から与えられた任務は国境警備なのだから、そう頻繁に戦闘に起きるとは限らないだろう。
戦闘に参加するかもわからないんだし、働く前から怪我する心配なんてしなくても大丈夫大丈夫。
ん?
「何事も怪我しない方がいい。 死にそうになったら逃げ帰ってきてもいいからね」
「はい、ありがとうございます」
本当にエメリッヒ店長はダンディーだ。
無理に引き止めず、命あっての物種である事を促すだけに留めて、さり気なく気遣ってくれる所が渋い。
うん、安心してください、いざと言う時は逃げますから! 隠れますから!
「でも金を持っていなければ宿に戻ってこなくてもいいからね〜」
「エマちゃん、ひどい」
看板娘のエマちゃんはすかさず毒をインターセプトしてくる。
反射的に嘆いたけど、不快感はない。
言葉に毒はあるけれど軽口で緊張を解すように明るく話しかけるのは、彼女なりの激励だ。
一週間滞在した程度の傭兵相手に、出来る事なら生きていればいい、と思ってくれるくらいには優しい子である。
だから、ちょっとだけ嬉しい。
そう―――今日から僕は傭兵である。
「それじゃあ時間ですから、行きますね」
「ああ、行ってらっしゃい」
「またねー」
離れる事を惜しみながらも自分はエメリッヒ店長とエマちゃんに手を振り、一週間ばかり世話になった宿を後にした。
―――。
王都の外に通じる門までやってきた。
宿の近くにあった門ではなく、王都のまた別の端っこの所にある門だ。
門の図体は結構大きく、自分が一週間前に通った所よりもいくらか立派で堅牢そうである。
門の周りには朝っぱらから人やら馬車やらでごった返ししていた。
この門は国外の街道へ通じていて、流通の要となっているらしい。
デトワーズ皇国はヨールビン大陸の端っこにある小国のはずだが、活気が感じられる辺り、貿易は盛んのようである。
今、初めて知りました。
朝だと言うのに…いや、朝だからこそ周りの人が忙しなく動く。
色んな人も準備や時間に
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