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相模英二幻想事件簿
File.1 「山桜想う頃に…」
V 同日 PM8:56
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初からこれを伝えるつもりだったかの様に…。
「我が弟は、働き手として実に優秀だった。どんな仕事もそつなく熟し、私の右腕として共に家を守っていた。だが…私が妻を娶ると、弟の態度は一変してしまった。私も気付けばよかったのだ…。妻のことを…弟も慕っていたのだと…。妻は幼い時分より知っておった。無論、弟とて同じことなのだ。それ故に…私は殺されてしまった。今にして思えば、私が気付き、弟へ問えばよかったのだ。さすれば…もっと共に生きられたやも知れん…。」
 私達は何も返すことが出来ず、ただ堀川を見ているしかなかった。堀川はそんな私達を見て淋しげな笑みを浮かべると、その体を見る間に消し去ってしまったのだった。後には桜の花弁が、堀川がいた場所に鮮やかに浮かんでいたのだった。
 その花弁は小さく、あの山…櫻華山に咲く山桜のものだと直感した。
「京…あれは…なんだったんだ…?」
「さてね。俺達があの櫻華山へと行ったことで、ここへ残っていた記憶が再生されたんじゃないか?」
「あれ…僕達と会話してたぞ?」
「霊に取り込まれてるからだろう。ま、いくらでも会話出来るさ。」
「…僕にはさっぱり解らなんよ…。」
 いつもそうだが、藤崎の言うことは理解し難い。私がそう言うといつも「解らなくていいんだ。こんなこと、理解する必要なんてない。」と言う。多分…藤崎は私に、普通が一番なんだと言いたいんだろう。
 大学の時もそうだった。あの痛手を、こいつは今でも抱えているに違いない。だったら私と亜希は、そんな藤崎を支えられる者にならないと…そう思っている。これが友人として出来る、精一杯のことなんだ…。私はただ、深い溜め息を一つ溢した。
 藤崎は私の態度を見て苦笑いしていたが、暫くしてこう言ったのだった。
「ま、一つ言えることがあるな。さっきの男はだ、桜庭さんが話ていた堀川兼吉の長男だったってことだ。」
 その言葉に、私は目を丸くして言った。
「確かに堀川とは名乗ったが…。だけど、それが何で兼吉の長男になるんだ?」
「英二…お前、話ちゃんと聞いてなかったのか?桜庭さんの話によれば、兼吉の長男は事故死になっていただろ?だが、どうなって死んだかは言わなかった。とすると、原因が伝わってないってことだ。」
「それで?だからって殺人に結びつけるには…。」
「まぁ聞けよ。江戸末期と言っても、未だ医学も未熟だったし、事故死や病死に見せ掛けるなんてのは難しくなかったはずだ。次男が長男に代わって家長になったんなら、これが偶然だと思うか?あの櫻華山だって、落ちて死ぬ程のものじゃない。落石もなけりゃ深い溝もなく、あんなとこでどうやったら事故死するんだ?」
 私は藤崎の言葉に反論出来なかった。櫻華山は高いとはいえ、散歩がてらにでも行ける小さな山だ。岩もなければ大きな川や池、崖すらない。言ってし
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