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逆さの砂時計
生の罪科 2
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心掛ける。
 これくらいなら慣れればどうとでもな……
 「んきゃ!?」
 べしゃっ! と、盛大な音を立てて、小さな女の子が机を挟んだ正面ですっ転んだ。
 顔と膝を擦り剥いた挙げ句、買ったばかりの焼き菓子が砕けてしまった所為か……女の子は地面に半身を起こした状態で、唐突にふぎゃああと大声で泣き出した。
 周りの大人が困ったような笑顔で話し掛けるが、女の子は更に声を上げてボロボロと涙を溢すばかり。
 えーと……
 「お嬢様一名、特等席へご招待ーっ!」
 もふもふの着ぐるみがトトトッと走って来て、女の子を抱き上げた。
 目線が急に高くなった女の子は瞬き、その場でくるくると二回転した犬の肩に乗せられ……
 「さぁ、お嬢様。この焼き菓子を食べて御一緒に会場を散策致しましょう!」
 差し出された綺麗な形のお菓子と、犬の思いもよらぬ美しい顔に面食らったようだ。頬を赤らめ、嬉しそうに笑った。
 「クロちゃん」
 はしゃいだ様子で人波に消えて行った犬の背中を見送ると、今度はプリシラが現れて砕けたお菓子を拾った。それを机の隅に置いて、私を見据える。
 「ちょっといらっしゃい。売り子は他の人に頼むから気にしなくて良いわ」
 珍しく真面目な表情だ。口調も僅かに硬い。
 「分かりました」
 黙って付いて行った先は、教会の裏手。此方に来る客は居ないからか、表側と違って静かだ。
 一歩先のプリシラは、私に背を向けたまま、溜め息を吐いた。
 「貴方、あの女の子を見てどう思った?」
 「……単純だな、と」
 また溜め息を一つ。何が言いたいのかと首を傾げると、くるっと反転したプリシラが突然。私の頬を平手打ちした。
 痛くはないが、ちょっと驚いた。
 「……クロちゃん。いいえ、クロスツェル。貴方は何を見ているの? その目に何が見えているの?」
 何が、と言われても……質問の意味が解らない。見たままとしか答えようがないのだが。
 「ねぇ。アリア信徒の役目って何だと思う?」
 「アリア様の教えを世界に広め、苦しむ総ての者を救う事です」
 「模範回答ね。じゃあ、どうやって広めるの?」
 どうやって?
 教典を読み聴かせたり、実際に困ってる相手を手助けしたり……あ。
 「解った? そうよ。あの女の子は「泣いていた」の。貴方は迷わず手を差し出すべきだった。あの子を笑顔にする事が、私達アリア信徒の役目。傍観者に徹するなんて論外よ」
 手を、差し出す。私の……この
 「! ……プリシラ?」
 「貴方は汚れてなんかいない」
 また頭を抱えて撫でられる。
 「汚れているのなら、これからの行いで浄めれば良いの。貴方のその手で救える者を救い、護れる者を護れば良いの。見つめなさい。生命を。有り様を。貴方のその手を待ってる人達がたくさんいる。気付きなさ
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