生の罪科 2
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と。
アリア様の教えが、苦しむ善を導いている。
アリア様の教えを広めているアリア信仰は。
すべてではないにしろ、手が届く範囲の善い人間を助けているんだ。
私にも……奪うしかできなかった悪にも、善を救う術があるのだと。
ハーネス大司教と、アルスエルナ王国が教えてくれた。
アリア様が教えてくれたことをもっともっと広めれば。
お母さんやテオみたいな、悪の犠牲者を減らせる。
私は、クロスツェルは、その為に生きている。
私の道はアリア様の物だ。
たくさん学ぼう。
たくさん知ろう。
女神アリアの世界を、彼女が愛した世界に戻すんだ。
……でも。
「バーデルだけは、記憶にも留めたくない、な」
お母さんの故郷だけど、お母さんが死んだ国。
お父さんが強制兵役中に死んだ国。
テオが死んだ国。
ついでに、『レスター』も死んだ国になるのかな。
あの国は……嫌いだ。
「ぃいやっほーいっ! 見て見てクロちゃーん! とっても良い天気よ! バザー日和よー!」
「……………………」
お手製の衣装をよほど気に入っているのか。
多くの信徒達が会場設営の仕上げに勤しむ中。
桃色のフリルドレスを纏ったプリシラが、無駄に陽気に走り回る。
協調性も何もない彼女だが。
不思議と誰からも嫌な顔は向けられず、苦情一つ聞こえてこない。
膝丈の裾が揺れるたびに視線が集まっている気がしなくもないが。
彼女の奇天烈な格好は今更だ。多分、気のせいだろう。
そんな、邪念に塗れた信徒ばかりだとは思いたくない。
というか、あの衣装はいったい何を目指して造形されたんだ?
長い髪を両耳の上で括り、やはり桃色のフリル付きリボンで飾って。
ワンピースらしきフリルドレスも、リボンだらけで見た目がくどい。
二の腕部分でぷかぷかに膨らんでいる袖とか、邪魔にならないのか?
素足にも長いリボンを器用に巻き付けているが。
あれだけぴょこぴょこ跳ね回ってて、何故ずり落ちない。
爪先と踵を露出していて、靴の意味があるのか?
「謎すぎる」
「謎なんて、半歩奥に踏み込めば、あっという間に解けちゃうものよお?」
あらかじめ用意しておいた簡易机の上へ販売品を並べる私に。
背後からねっとりと絡み付いて「うふふ」と笑うアーレスト。
彼も、毛足が長いもふもふ仕様な犬の着ぐるみ、という、実に意味不明な姿をしているが、誰が用意したのかなんて、改めて尋ねるまでもない。
私の生存本能が強く訴える。
関わるな、と。
「クーちゃんももっと楽しみましょうよ。年に一度の精神解放日なのよ? いつもと同じじゃ、つまらないじゃない!」
バザ
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