生の罪科 2
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に傷でも付いたら一週間は不気味な泣き声で魘されそうだ。
「嬉しい! 嬉しいわクロちゃん! 貴方いっつも私達を無視するんですもの。存在ごと無いことにされてるんじゃないかと毎日食事が喉を通らなくて!」
昨日どころか今朝もパンを二つ追加してた人間の台詞ではない。それと、頭を抱えて撫でるのは是非止めていただきたい。長衣の裾が短くなってるのも、そろそろ上からお叱りが来そうなものだが……改めそうもないな。
「酷いわクーちゃん……私だけ避けるなんて!」
「アーレスト、お座り!」
「アイ、マム!」
膝を床に突けて、ぴしっと背筋を伸ばすアーレスト。
犬か。
「ねぇ、クロちゃん。来週、教会主催のバザーがあるでしょ? 私達と組まない? 出し物を考えるの!」
「いえ、私は経理担」
「一緒に! 考えない?」
きらきらと瞳を輝かせながら迫られてはもう、何も言えない。言い返すと陸な目に遭わない気がする。
彼女が絡むと必ず何処かから奇妙な悲鳴が聴こえるのだ。聴こえてる内はまだ良い。自分が上げる側になるのだけは断乎として遠慮したい。
「……お好きにどうぞ」
「ふふーん。楽しみね、バザー!」
「私も楽しみー! ところで、もう動いて良いかしらプリシラぁ?」
「三回回って、にゃあ!」
いや、其処は わん じゃないのか。
「ぐるぐるぐる、にゃあ!」
そして実践するのか。
……なんなんだこの二人は……。
『レスターが奪って殺した以上に、迷える生命を救いなさい。それが罰だよ、クロスツェル』
私がレスターという名前を持っていた事は、ハーネス大司教と数人しか知らない。彼らは決して私をレスターとは呼ばないから、レスターは死んだのと変わりない……すごい屁理屈だ。
でも、中央教会に住んでみて判った。アリア様は多くの人間を救っていたんだと。
アリア様の教えが、苦しむ善を導いている。
アリア信仰は、総てではないにしろ、手が届く範囲の善い人間を助けているんだ。
私にも……奪うしかできなかった悪にも、善を救える術があるんだと、ハーネス大司教とアルスエルナ王国が教えてくれた。
アリア様が教えてくれた事をもっともっと広めれば、お母さんやテオみたいな悪の犠牲者を減らせる。私は……クロスツェルは、その為に生きてる。
私の道はアリア様の物だ。
たくさん学ぼう。たくさん知ろう。女神アリアの世界を、彼女が愛した世界に戻すんだ。
……でも。
「バーデルだけは……記憶にも留めたくない、な」
お母さんの故郷だけど、お母さんが死んだ国。テオが死んだ国。お父さんが強制兵役中に死んだ国。ついでに、レスターも死んだ国になるのかな。
あの国は……嫌いだ。
「ぃやっほーいっ! 見て見てクロちゃー
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