生の罪科 1
[6/6]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
せた、真っ白な服の老人と目が合った。
「やっと見つけたよ、レスター。遅くなって、すまなかった」
『レスター』?
……ああ、僕の名前か。
もう自分も誰も呼ばないから、忘れかけてた。
「誰?」
「私はハーネス。アリア信仰アルスエルナ教会の大司教を務めている者で、君達母子の後見人……だった。レイラは、助けられなかったが……せめて、君だけでも見つけられて、良かった……」
良かった?
何が良かった?
「僕は、処刑されるの?」
「いいや? 君は私が保護する」
「保護? どうして?」
「私が、君の新しい家だから」
新しい家。
お母さんが行こうとしてた場所。
国境を越えた、お父さんの故郷。
「何故? 僕はお母さんとテオを殺した罪人だ。殺されるんならともかく、家があって良い人間じゃない」
ハーネス大司教は、少し驚いた顔をして……そうかと頷いた。
「罪は償わないといけないね。おいで、レスター。君の罪は私が裁こう」
目の前にスッと差し出された老人の手を、じぃっと見る。
たくさんのシワを刻んだ、細くて白い手。
この手を取れば、僕は死ぬんだろうか。
裁くって言うんだから、きっとそうだ。
この人も綺麗な人間なんだろうけど……
神様に仕えている人なら、僕が触っても死なない、よね?
「まずは、君のあり方を変えてしまおうか。そうだね……」
重ねた僕の手を自身の額に当てて、大司教はふわりと柔らかく微笑む。
「新しい名前をあげよう。鎖に架けるという意味を持つ、罪人に相応しい、戒めの名前だよ」
罪人の『レスター』は死んだ。
代わりに、新しい役目を与えられた僕は……
……私、は……
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ