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逆さの砂時計
生の罪科
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 レスター……。
 あぁ、僕の名前か。もう忘れかけてた。
 「誰?」
 「私はハーネス。アルスエルナ王国アリア信仰の大司教で、君達母子の後見人、だった。レイラは助けられなかったが……君を見付けられて良かった」
 良かった? 何が「良かった」?
 「僕は処刑されるの?」
 「いいや? 君は私が保護する」
 「保護……なんで?」
 「私が君の新しい家だから」
 新しい家。お母さんが行こうとしてた場所。国境を越えた、お父さんの故郷。
 「なんで? 僕はお母さんとテオを殺した罪人だ。殺されるんならともかく、家があって良い人間じゃない」
 ハーネス大司教は少し驚いた顔をして……そうかと頷いた。
 「なら、罪は償わないといけないね。おいでレスター。君を裁こう」
 スッと差し出された老人の手を、じっと見る。
 この手を取れば僕は死ぬんだろうか。裁くんならきっとそうだ。この人も綺麗なんだろうけど、神様に仕えてるなら触っても死なない……よね。
 「まずは君の在り方を変えてしまおう。そうだね……」
 重ねた手を自身の額に当てて、大司教は微笑む。
 「新しい名前をあげよう。鎖架の意味を持つ、罪人に相応しい戒めの名前だよ」
 罪人レスターは死んだ。代わりに新しい役目を与えられた僕は……私は……

 
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