生の罪科
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あれから何年経ったか。
「こら、待て泥棒ーっ!」
畑を見付けては物を盗んで、露店を見付けては物を盗んで。
鳥を殺して、魚を殺して、僕は生きてる。
ただ飢えを凌ぐ為に食べて、生きてる。
「……はは……っ」
村の外へ逃げ切って、奪った物を全部食べて。疲れたから木に背中を預けて座る。
殴られるのも怒鳴られるのも嫌だし、深夜なら気付かれ難いと思ったんだけどなぁ……やっぱ、そう甘くはないか。
「そりゃそうだ。皆、必死なんだから」
汗水垂らして畑を耕してる所を見た。必死に川の水を運ぶ女の人がいた。作物を実らせるのには時間と手間と途方もない労力が必要だ。そんな事は知ってる。
でも、僕には耕せる土地も道具も種も無いんだ。耕して育てる間に飢えを凌ぐ方法が無いんだ。
だから奪う。食べる為に奪う。
「……身勝手だな」
解ってる。お母さんを殺した連中と同じ事をしてるんだ、僕は。
食べたいから奪うのと、奪いたいから奪うのと。其処には何の違いも無い。
結果は略奪。それだけ。
「…………汚い……汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い……!」
笑い声がする。たくさんの笑い声が頭の中で反響する。お母さんを犯して殺した兵士の笑い声が、自分の笑い声に変わっていく。
……なんで生きてるんだ?
僕はなんで生きてるんだ!
奪って殺して食べて!
それにどんな意味があるんだ!!
「汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い」
ガリガリと自分の肩を引っ掻いて。引っ掻いて引っ掻いて引っ掻いて。皮膚を削いで血が滲む。痛い。痛い。痛い……それでもお腹は空く。喉が渇く。
『誰かに迷惑を掛けては駄目。皆、生きる為に精一杯頑張ってるんだから。私達は私達で、頑張って生きましょうね』
はい、お母さん。
でも、頑張れる場所が無いんだ。奪うしかないんだ。迷惑だって知ってる。解ってるよ。でも、他にどうして良いのか判らないんだ。ただ、食べたいんだ。馬鹿みたいに食べて腹を満たしたい。
汚い罪人なんだ。僕は。
「……アリア様」
お母さんが僕にくれた水鳥のペンダントは、あの連中に奪われてしまったけど。お母さんが信じていた教えはまだ覚えてる。其処には僕の行いが悪であるとはっきり刻まれてた。罰せられるべき悪であると。
なら、僕は裁かれるべき罪人だ。生きる事を認められない悪の権化だ。これ以上生きていてもお母さんに嫌われるだけじゃないか。
でも、食べたい。
生きたい。
このまま死にたくない。
何かをしたい訳でもないのに……!
「アリア様……っ」
赦してください。この罪深い魂を赦してください。赦してください。赦して赦して赦して赦して赦して!!
「君、アリア信徒なの?」
「!?」
「そっか……そ
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