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蠢くもの
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第一章

                       蠢くもの
 プロレスラーのジャイアント坂本はそのリングネーム通り大きい。二メートルはある。
 筋骨隆々とした身体であり恵まれた体格で圧倒的な強さを見せている。
 その彼だが巨体を維持する為にかなり食べている。
「いつも凄いですね」
「まだ食べられます?」
「ああ、勿論だ」
 今日はちゃんこを食べていた。食べながら後輩達お言葉に応えていた。
「まだまだな」
「成程、それじゃあ」
「どうぞ」
「ああ。しかしこのちゃんこ」
 そのちゃんこを食べながらの言葉であった。
「あれだな」
「あれ?」
「あれっていいますと?」
「魚が美味いな」
 笑顔での言葉だった。
「それもかなりな」
「ああ、そうですよね」
「タラもシャケも」
「いい味出してますよね」
「そうだな。それに」
 それを食べながらだ。彼はまた言った。
「野菜も色々と入ってるしな」
「野菜もたっぷりと食べないといけないですし」
「何でもたっぷりとですね」
「ああ、食べ物は身体にいいものをたっぷりとだ」
 巨大な丼の中に並々と入れられたそのちゃんこをどんどん食べながら言う。
「食べないとな」
「それで何杯目ですか?」
「そういえば」
「十杯目か」
 少し考えたうえで後輩達に答える。今はテーブルの上に置かれた巨大な鍋を囲んでいる。その鍋にこれでもかと魚や野菜が入れられているのだ。
「それだけは食べてるな」
「けれどまだですね」
「まだいけますよね」
「勿論だ。それはそうとな」
 坂本はその十杯目を食べながらまた言う。
「テレビの旅番組の話だけれどな」
「それですけれど」
 眼鏡をかけた小柄な男が彼に言ってきた。マネージャーである。岩の如き顔の坂本とは正反対に優しい顔立ちをしている。まさに好対称である。
「場所は南アフリカになりました」
「南アフリカか」
「はい、シーラカンスを探す旅ということで」
「シーラカンスか」
「それでいいですよね」
「面白そうだな」
 坂本のそのいかつい顔が笑顔になっていた。
「シーラカンスか」
「はい、坂本さんもそれでいいですよね」
「ああ、是非やらせてもらうな」
 笑顔で答える彼だった。
「シーラカンスを釣って食うんだな」
「あっ、それはなしです」
 マネージャーはそれは否定した。
「貴重な魚ですから。発見するだけです」
「それは駄目か」
「はい、駄目です」
 真面目な声で言うのだった。
「そういうことで」
「わかった。それじゃあそういうことでな」
「食べるものは別にありますし」
 こんな話もしたのだった。そうしてその南アフリカにテレビ番組の収録で向かった。そのシーラカンス自体はすぐに見つかったのだっ
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