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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
53.激戦外
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どうかすらわからなくなってくる。黄金の翼を携え神々の化身の名を持つ梟が巨大な蛇の顎の間に捉えられている。
ミシミシと骨が軋む音とともに“
真実を語る梟
(
アテーネ・オウル
)
”が悲鳴のような叫びをあげる。そして一瞬のうちに元の魔力の塊へと還されていく。
「そ、そん……な……」
あまりの光景に呆然とするだけだった。
「あァあー、期待外れにもほどがあるだろォ」
金髪の吸血鬼は退屈そうに頭を掻いている。
眷獣の能力や本人の魔力量の差が圧倒的に違いすぎる。こんな化け物を相手に勝てる気が全くしない。
だが、ここまで実力差がある状態では、逃げることさえ彼はさせてくれないだろう。
「もういいよ、テメェ。……死ねよ」
つまらなさそうの声で呟かれた。
それとともに数匹の蛇が高速で飛来してくる。
あれを受けてはいけない。先ほどのに比べれば難なく避けられる。それはわかっていても身体が言うことをきいてくれない。
ゆっくりとした速度で蛇がこちらへと向かってくる。いや、ゆっくりとしているのではなく柚木の目にそう見えているだけだ。
死の寸前の人間が見る光景は遅く見えるという。人間ではなくなってしまった柚木には感じることがないはずのもの。
「…………ゴメンね、彩斗」
小さく呟く。
目をゆっくりと閉じた。
すると目の前で小さく何かが弾ける音がした。
わずかに目を開けるとそこには無数の泡が弾けていた。
その瞬間、飛来してくる蛇が柚木の前で何かに激突する。目には見えないがたしかにそこには何かがある。まるで不可視の壁がそこにあるようにだ。
「なんとか間に合ったみたいね。大丈夫だった、柚木ちゃん」
聞き覚えのある声に響きに振り返る。
そこにいたのは走ってきたせいで息が荒くなっている緒河美鈴がいた。
「また増えやがったか。まァ、何人来ようが結果は一緒だけどなァ」
「すこし下がってなさい、柚木ちゃん」
優しい声で微笑む美鈴。しかし振り向きざまに見えた彼女の表情は形容しがたいものだった。
「……そうかしらね」
不敵な笑みを浮かべる美鈴。その声色はいつもの穏やかな彼女とはかけ離れたものだった。
それと同時に美鈴の体から異様な魔力が大気へと放出されていく。
「ほォ……面白い魔力を出すじゃねェか。お前は俺を楽しませてくれそうじゃねェかよ、クソ女ァ」
「いいわよ。楽しませてあげるわ。……覚悟しろ、クソ金髪」
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