2部分:第二章
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」
「ではな。また何時か来る」
「うむ、またな」
話が終わった。そして別れの段階になった。
「しかしな」
死神は最後に述べてきた。
「わしを見ても怖がらぬとはな。大した肝っ玉じゃ」
「何、わしも武士じゃ」
実朝はその言葉に豪胆に笑ってみせてきた。
「そんなことでいちいち怖がるか。人が死ぬのはわかっている」
「ほう」
死神はその言葉を聞いて笑みを浮かべてきた。陰気な顔であるが笑みは浮かんだ。
「それで怖れぬのじゃな」
「死ぬなら戦場で死にたい。それだけじゃ」
「見事なものよ。それこそ武士じゃ」
「わかったらな。また最後に会おうぞ」
「わかった。では戦場で会うことを期待しておるぞ」
「またな」
こうして二人の話は終わり死神は去った。実朝は次の日には元気な顔で起き上がっていた。
朝起きて朝食と軽い稽古の後でまた馬に乗って街に出た。そのままあの薬屋に向かったのである。
見れば死神がまだいた。相変わらず薬を売っている。
彼はそれを見た。昨日とは違い心中は穏やかに。しかしそれを知る者はいない。
ふと目が合った。そこで互いに笑みを浮かべ合った。
「またな」
「はい」
それだけであった。しかしそれだけで充分であった。二人は別れる。昨日鎌倉でそれなりの数の者がなくなってると聞いたがそれが運命の結果なのだと実朝は知っていた。それについて何も思うところはない。死んだ者に救いがあればいいとは思っているにしろだ。
「それも運命のうちだな」
達観を今感じた。死ぬのも運命だしそこから何処かへ行くのもまた運命なのだと。彼は今それを思いながら馬に乗り死神の側を去るのであった。己の運命をただ進む為に。
死神 完
2007・1・10
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