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インビシブル
1部分:第一章
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がいる。彼は貰った犬で雄である。子供のいない彼等にとってはまさに子供の様な存在なのが彼等である。
 ワコの餌は美香子の担当だ。見れば大きな皿の中のドッグフードを美味そうに食べている。窓の外にその光景がはっきりと見えていた。
 そうした朝の風景を見ながらだ。彼は考えていた。
「あの夢は」
 その不思議な夢のことだった。
「何だったんだ?」
 何かに襲われているがそれが見えないのだ。そのことがわからなかった。
 だがここでこのチコとワコが必死に鳴いているのを思い出した。それで彼はまずはチコを見た。そうして彼女に対して問うのだった。
「何で御前が鳴いていたんだろうな」
「にゃんっ」
 するとだった。彼女は強い目で彼を見てきた。その黒い目の光がやけに強い。
 そのうえで今度は窓の外にいるワコに顔を向けてみせたのだった。まるで何かを促している様にだ。
「んっ?何かあるのか?」
「にゃあ」
 あると言いたげな今の言葉だった。すると窓の外の犬小屋のところにいるワコもまた家の中の彼に対して鳴いてきたのだった。
「ワオン」
 彼もまた同じだった。何かを促している様だった。淀はそうしたペット達の声を聞いてまた夢のことを思い浮かべた。そうしてまたチコを見た。
 窓の外と自分を交互に見ている。やはり促している様だ。

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