8部分:第八章
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第八章
こうして事件は終わった。神父は約束通りヴァシェを連れて署長に一部始終を話した。署長はその話を全て聞いてから言うのであった。
「成程」
「はい、これが話の全てです」
神父は謹厳な声で署長に対して話した。
「おわかりになられましたか」
「聞きましたがわからないところの多いお話ですね」
署長はこう実直に答えた。
「どうにも」
「そう仰るのですか」
「悪霊ですか」
まず言うのはこのことだった。
「悪霊があの洋館にいてですか」
「私が以前あの洋館で倒したあの司教のです」
「魂は生き残っていたのですね」
「そして尚も異端として蠢いていたのです」
「それでなのですか」
「はい、そういうことでした」
こう署長にあらためて話す。
「世の中こうしたこともあるのです」
「話は聞いていました」
署長はこうも述べた。
「ですが。まさかここであったとは」
「思いも寄りませんでしたか」
「全く。そうしたこともあるのですね」
「はい。ですがこれで、です」
「事件は解決しましたね」
「あの司教は地獄に堕ちました」
確かな声での返答だった。
「間違いなく。これで」
「わかりました」
「人は誤った考えを持ったまま死ぬとです」
「悪霊になる」
署長が現実のものとして知ったことだ。
「そういうことですか」
「そしてそれにより人や世に害を与え続けることもあるのです」
「今のようにですね」
「はい、おわかりになられましたか」
「よく」
こう頷いて答えた。
「本当にです」
「人の世は科学やそういったものでだけ動いてはいません」
「その他のものでもですか」
「科学にしてもです」
神父はその科学について言及した。
「神の御力の一つです」
「神の、ですか」
「そして我々は神の御力を使わせてもらっただけなのです」
「そしてあの司教をなのですね」
「はい」
署長に対して静かに答えた。
「そういうことです」
「成程、そうですか」
「そういうことです。それではです」
「バチカンに帰られるのですね」
「また。次に行くところがありますので」
神父は穏やかな笑顔に戻って述べた。
「ですから」
「左様ですか。それでは」
「機会があればまた御会いしましょう」
「はい、そちらの方も」
署長はヴァシェに対しても声をかけた。
「また。縁がありましたら」
「はい、宜しく御願いします」
ヴァシェもまた穏やかに笑ってから署長に言葉を返した。
「その時には」
「そういうことで」
こうして署長は神父達と別れた。事件は只の事故として処理された。しかし署長はこの事件のことを何時までも覚えているのだった。彼にとって到底忘れられない事件であったからだ。悪霊が起こした事件として。
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